硬度の高い水で
岩茶を淹れるⅡ

今回は、2019年製茶の岩茶、慧苑の百年老欉を
硬度300mg/ℓのエヴィアンで淹れました。 正岩茶です。

浄水で淹れた場合

水色:透明感のある茶褐色
香り:香りは鼻筋に沿って上へ上へと昇る
苔むした木立のような香り、昆布や若芽のような青い香り、
穏やかで平和な海辺を思わせる香り
当たり:軽やかだがごつごつしている、
喉越しにはやや角張りもある
味わいと余韻:爽やかで青々とした草むらの香味、
甘さはない

硬水で淹れた場合

水色:浄水で淹れたお茶より濃いが、透明感はある焦茶
香り:香りは鼻全体に丸く広がる、
鼻の上部には海の岩場のような香り
鼻の下部には杏子や干し葡萄のような香り
他にも、岩塩のような塩味のある香り、
胡椒やシナモンのようなスパイス系の香り
口当たり:重量感があるごつごつしている、
喉越しにはやや角張りもある、
口内にじわじわと張り付くような感じ
味わいと余韻:香ばしい、塩味がある、
清涼感や甘味はない このような結果になりました。

硬水(エヴィアン)で淹れた岩茶

今回用いた、正岩茶の百年老欉は
硬水(エヴィアン)で淹れても濁りはありませんでした。
お茶の香りについては、抹茶の時と同じで
全く別の、多種多様な成分を感じ取りました。
口当たりは重みがあり口の中に張り付くような
存在感もありました。
味わいと余韻は、軟水で淹れた場合よりも
軽やかさや華やかさがなく、
香ばしさはあるものの、地味な印象でした。
塩味も僅かにありました。

個人差はあるかもしれませんが、
正岩茶の場合硬水の方が香味豊かになると感じます。
いろんな香りといろんな味わい、それでいて統一感はある。
軟水(石川県水の浄水)では、のど越しが素直すぎて
細い線のような印象のお茶になってしまいます。

岩骨とか岩韻といったものを引き出すには
軟水は相応しくないように感じます。
武夷山の水の硬度や他のミネラルの含有量は
わからないままですが
赤い色をした岩肌が見えているような土地ですから
カルシウムやマグネシウムのみならず
カリウム、ナトリウムなどのミネラルも豊富なことでしょう。

終わりに

これまで名水を始め硬度に固執してきましたが、
やはり水の成分は、硬度(カルシウムとマグネシウム)だけではない。
他のミネラル等が一体となり水の味を作っていることに
大きな意義があると感じます。

また、毎回感じることですが
石川県や金沢市の水は甘い口当たりと味わいで、
どんなお茶も優しい美味しさにしてしまうことは心憎い。
こんなに水が美味しいならお茶にしなくても十分愉しい
そしてお茶の香味を乗せたら更に悦びが増すのです。

これをもって、水についてはいったん筆を置きます。
それにしても、武夷の水で武夷岩茶を飲みたい。
ひしひしとそう思わされました。

今回の岩茶をお願いした方は
岩茶と向き合って10年を軽く超える方でした。
その方によると、前回私が飲んだ岩茶は
いわゆる、おみやげ岩茶だったようです。(笑)

これからも、種々の実験とテイスティングを繰り返し
お客様にとって有益となることを微力ながらも発信します。
ともに味わいたい方はご連絡ください。
このようなコラムをお読みになっている時点で、
どなたも大歓迎です。

 

参考文献
「究極のウーロン茶「大紅袍」の世界 岩茶」 左能典代 著
「ものがたり 茶と中国の思想」 佐野典代 著