硬度の高い水の国々で
緑茶を淹れるⅣ

今回は、硬度300の水(エヴィアン)で抹茶を点てました。

抹茶は他のお茶と異なり、抽出ではなく撹拌をします。
抽出の場合は茶葉から浸出する成分を
飲んでいることになりますが
撹拌の場合は茶葉全体を取り込んでいるような状況です。
そのため抹茶は、抽出するお茶より
水の影響を受けにくいことは確かです。
これまで抹茶を様々な水や国で点ててきて
別物のようだとか際立って風味が異なるといった経験を
したこともありません。
今回はその前提や経験を踏まえつつも
水の硬度差がどう影響するかを知るため実験しました。
日を変えて、湯沸かし器具も変えて、三回行いました。

DAY1

~鉄釜の名水・湯沸かし器の名水・湯沸かし器の浄水・湯沸かし器の硬水(エヴィアン)~

湯沸かし器はビタントニオというメーカーのもの。
鉄釜もビタントニオも、100℃近い状態の湯を
柄杓で60cc程度すくい抹茶碗に注ぎ撹拌しました。
抹茶はどれも1.5g。

鉄釜の名水:覆い香と肥料香。冷えるとチョコレートのような甘い香り。口当たり円やか。舌先に僅かに苦味。後味に清涼感あり。

ビタントニオ名水:覆い香と肥料香。冷えるとチョコレートのような甘い香り。口当たりは釜の名水よりきついがビタントニオの浄水よりサラリとしている。舌の前面に苦味。後味は清涼感と渋味が混在する。

ビタントニオ浄水:覆い香、肥料香と湯沸かし器の臭いあり。舌の前面に渋味。後味にはざらつきと渋味。

ビタントニオ硬水:覆い香、肥料香と湯沸かし器の臭いに加えて、他の香りがある。冷えるとチョコレートのような甘い香り。舌に刺激を感じる濃い味わい。様々な味が共存し、ミネラル感と表現しても差し支えないようなパワーがある。後味には渋味。

◇DAY1まとめ
硬水の抹茶には、他にない香りと濃さ、味の広がりがある。
渋味は残る。

DAY2

~湯沸かし器の名水・湯沸かし器の浄水・湯沸かし器の硬水(エヴィアン)~

湯沸かし器はZOJIRUSHI。
100℃になると同時に60ccを抹茶碗に注ぎました。
抹茶はどれも1.5g。

ZOJIRUSHI名水:覆い香と肥料香。口当たりはあっさり。舌先に僅かに渋味。後味は軽く余韻が短い。

ZOJIRUSHI浄水:香ばしさと覆い香と肥料香。舌の前面に苦味。後味にも苦味。

ZOJIRUSHI硬水:覆い香と炒り豆のような香ばしい香り。重量感がありおからでも食べたかのような濃密さがある。後味は渋い。

◇DAY2まとめ
硬水の抹茶には、抹茶らしからぬ豆のような香ばしい香りや食べ物のような重みがある。後味は渋味あり。

DAY3

~やかんの名水・やかんの浄水・やかんの硬水(エヴィアン)~

銅のやかんで沸かし90℃になるのを待ち60ccを
抹茶碗に注ぎました。抹茶はどれも1.5g。

やかんの名水:覆い香と青く若々しい草の香り。口当たりはサラリとしている。舌の前面で渋味を感じる。

やかんの浄水:覆い香と肥料香。口当たりに重みあり。舌の前面で渋味を感じる。

やかんの硬水:覆い香と笹のような香り及びきな粉を焙煎したような香り。口当たりに重量感あり。濃厚。舌の前面で渋味を感じる。

◇DAY3まとめ
硬水の抹茶には、笹や焙煎したきな粉のような香りがある。重さと濃厚さがある。渋味も感じられる。

まとめ

総じて、エヴィアンで点てた抹茶には
一般に日本で供されるような抹茶とは異なる香りがあり
口当たりは重く味は濃厚で
味わい自体か後味に渋味があることがわかりました。
香りの変化もありましたが、少なくとも
不快感を催させることはない香りでした。
口当たりは濃厚ですので抹茶に初めて接する方は
慣れるまでに時間がかかるかもしれません。
初めての方に紹介する場合は「緑の野菜のスープ感覚で」
と言っても良いでしょうか。(逆効果かも…)
抹茶の濃度は官能検査上、エスプレッソ程度なので
そのようにご紹介することも可能かもしれません。
後味の渋味も避けられないことがわかりましたが
長くべったり喉に張り付くようなものではありませんでした。
抹茶が通常お菓子とともに提供されることを思うと
お菓子とのマリアージュによって和らぐ範囲の渋味でした。

追記

鉄釜の湯で点てた抹茶は湯沸かし器の湯で点てた抹茶より
香り豊かで口当たり円やかでした。
100℃の湯で点てた抹茶は90℃の湯で点てた抹茶より
渋苦味を直接的に感じました。

鉄釜から柄杓で湯をすくうと温度は5℃程度下がります。
お茶会ではほぼ全てのお点前で鉄釜が用いられます。
お点前では釜の蓋を開け柄杓で湯をすくい
釜の蓋は開いたままで抹茶碗を清め、抹茶を碗にしこみ
柄杓で再度湯をすくい抹茶を点てます。
蓋を開けると温度は下がりますので
抹茶を点てる瞬間の釜の湯はどれほど高くとも95℃程度
多くの場合はそれ以下の温度でしょう。
それを柄杓ですくうため、点てる際の湯は90℃以下。

鉄釜で沸かされた湯であること、
温度が90℃かそれより低いということは
抹茶を、香り高くかつ渋苦味控えめに点てるにも
適しているのでしょう。
余談ですが今回の実験で改めて確信しました。