紅茶の美味しい喫茶店を
きっかけにⅢ

モニタリング結果

下のような三種類の紅茶をご提供しました。
① 80℃の湯で淹れたもの
② 100℃になると同時に火を止めた湯で淹れたもの
(沸かしたての湯)
③ 100℃になってからも20分沸かし続けた湯で淹れたもの
(沸かしすぎた湯)
いずれも、茶葉量、湯量、抽出時間は同じです。
飲み比べに参加してくださった方々は
異なる三種の紅茶の飲み比べとして
臨んでくださいました。

頂戴した感想の要約は下のとおりです。

香味:桃のような甘味がある、渋味はほとんどないが舌に少しだけ広がる、青さもある、グリニッシュに似ている、草っぽい
全体的印象:穏やか、柔らかい口当たり、幼子のよう、紅茶が欲しいと思っていると物足りない

香味:米飴のような甘味、香りや渋みもありバランスが良い、喉で感じる渋味がある(嫌な渋味ではない)、カラメルのような後味がする
全体的印象:すっきり、透明感がある、清涼感がある、少しで満足できる、ヨーロッパ的、紅茶らしい、主張がある、個性と余韻がある

香味:香りの広がりは控えめ、ハーブティーに似た甘味がある、舌で感じる渋味もある、コクも後から追いかける、②よりも番茶(ほうじ茶)に似ている、余韻もある
全体的印象:端正さがある、きりっとしている、味の要素の均整が取れている、紅茶らしくない、煎茶好きな人が好きになる、お菓子とともに飲みたい、沢山摂取できる

上の結果を受けて

① の場合は、温度が異なるため引き出している香味の要素が明らかに異なります。
香りは控えめ、甘味は比較的大きく、渋味は比較的小さく引き出されます。
それが、場合によっては穏やかに感じられもするし
子供っぽい印象になったり
紅茶というのは物足りないとも言えるような結果となったのでしょう。
② 沸かしたての湯だと、その茶葉の持つ香味の要素を大きく引き出していると言えそうです。
味の各要素際立ち、バランス良く紅茶らしい。
インパクトもあるため少しでも満足できるという印象を与えたようです。
③ 沸かしすぎた湯だと味の要素の引き出し方が異なり
香りは出にくく、渋味は出やすくなっているようです。
渋味は味に立体感を与えるとも指摘されるところ。
それ故に端正だとか均整が取れているという意見が挙がったのでしょう。
煎茶が好き→渋味を受容できる→③の紅茶は煎茶好きな人が好きになるという意見にも繋がったのでしょう。
一方、渋味や苦味といった味の要素が強くなる程
人間の防衛本能により
甘味や香りといった要素は脳が遮断してしまうのではないかと指摘されるところ。
お菓子とともに飲みたいと思わせるのも頷けます。

紅茶の幅の広がり

モニタリングの最後に、モニターとなってくださった方に
「どれが一番美味しかったですか?」と聞くと
どなたも①を選ばれました。
次は②と③に意見が分かれました。

今回は特に、国産紅茶を用いたので
このような結果になったとも推測できます。
中国、インド、セイロン、最近著名になってきたネパールや台湾など…
別の個性を持つ紅茶を同じ条件でモリタリングすれば、
沸かしたての湯のものが一番人気を博すかもしれません。

沸かしたての湯は、茶葉の持ち味、香味の要素を
しっかり引き出します。
その意味で、公平で普遍的な紅茶の淹れ方だと思います。
しかし、どんな地域のどんな紅茶の場合も
最大多数の人が美味しいというわけではないようです。
多少大袈裟ではありますが
お茶の淹れ方は淹れる人の数だけ微妙な違いがあってもいいのかもしれません。

今回は店頭の水道水を用いましたが
例えば硬度のはるかに高い水を用いていれば
ジャンピングもモニタリングも
別の結果になったかもしれません。
硬水を20分沸かした場合と軟水を20分沸かした場合では
変化の現れ方が違うでしょうしから・・・

水の旅には終わりがありません、本当に。
次回はエヴィアンの実験に戻ります。

 

参考文献
「紅茶 おいしいたて方」 髙野健次 著
「ツウになる!紅茶の基本」 磯淵猛 著
「紅茶 味わいの「こつ」」 
川崎武志 中野地清香 水野学 著