紅茶の美味しい喫茶店を
きっかけに

次回も硬度の高い水に向き合うと言った矢先ですが・・・

先日、加賀の紅茶をとても美味しくご提供されている喫茶店に行きました。
そちらの御店主によると
「沸かしたてのお湯を、高いところから注いで、
しっかりジャンピングさせてあげています。
沸かしたてのお湯でなければジャンピングしません。」とのことでした。
(勿論ほかにも様々な淹れ方の工夫がありました。)
沸かしたてのお湯、ジャンピング…
聞き慣れた言葉です。しかし改めて疑問が浮かびました。
〇沸かしたてのお湯でなければジャンピングしないのか?
〇沸かしたてのお湯でなければ紅茶は美味しく淹れられないのか?
〇ジャンピングしないと紅茶は美味しく淹れられないのか?

できる範囲で検証してみました。
硬度の高い水の実験の続きは後日にします。

沸かしたてのお湯でなければジャンピングしないのか?

まず言葉の整理から。
ジャンピングとは、紅茶の世界で用いられる言葉です。
茶葉の入っているポットや急須
(紅茶の場合は通常、円形のガラスのティーポットが
使われています)に
お湯を注いだ時に、茶葉が上下に動くこと。
対流するように弧を描くというよりは、上下の動きです。

そのメカニズムは…
酸素をたっぷり含んだ熱湯を注ぐと、
細かい酸素の泡が茶葉の表面にびっしりとつき
その浮力で葉が上部に浮かび上がります。
しばらくすると泡は水中に消え、
茶葉は水分を含んだ重みでゆっくり沈んでいきます。
この時に、カテキンやカフェインが抽出され、
味、香りや色が熱湯に溶け込んでいきますが
熱対流に乗って、またふわふわと浮かんでくるというものです。

沸かしたてのお湯と20分沸かし続けたお湯を用いて
実験してみました。
使ったのは2019年夏に作られた国産紅茶です。
茶葉はいわゆるオレンジ・ペコ―程度の大きさの
リーフタイプ。
葉はよじれていますが端から端まで直線で計ると
最長で1センチ程の茶葉が含まれます。

汲みたての水を浄水器に通して
銅のやかんで一気に沸かしました。
温度計が90℃を超えたあたりから
水面に魚の目くらいの大きさの泡が
ぼこぼこ現れ始めます。
表面全体がぐらぐらとさざ波を打ち始め
100℃近くになったところで急いで火を止め
3gの茶葉が入ったガラスのティーポットに
200ccのお湯を注ぎました。

茶葉のうち半分程度は水面に浮き上がり
残り半分は底に沈んだままでした。
「水面→底の動きをする茶葉」の方が
「底→水面の動きをする茶葉」より多いため
少しずつ、底にたまる茶葉が増えていきます。
3分程度で茶葉の動きは止まり、その時点で
水面に1/4程度の茶葉が
底には3/4程度の茶葉がありました。
(あくまで目視レベルですが)
いわゆるジャンピングは3分程度続いたと言えます。

その間にも同じやかんの湯を沸かし続けて20分待ち
先ほどと同じティーポットに3gの茶葉を再度入れておき
同じ高さから、200ccのお湯を注ぎました。
先ほどより、底に沈んでいる茶葉が多いことは明らかです。
「水面→底の動きをする茶葉」がほとんど。
「底→水面の動きをする茶葉」は、ほぼ見られません。
2分もしない間に動きは止まり
水面1/4程度、底3/4程度の茶葉が残りました。
偶然かもしれませんが、水面と底にある茶葉の比率は
沸かしたてのお湯と同じ程度でした。
20分沸かし続けたことより空気(酸素)が抜け
(少なくとも減少して)おり
それにより、ジャンピングの量や時間に
違いが出ることが確認できました。
そして、いわゆるジャンピングは、一応、
沸かし過ぎた湯でも起こるということもわかりました。
(続く)

 

参考文献
「紅茶 おいしいたて方」 髙野健次 著
「ツウになる!紅茶の基本」 磯淵猛
「紅茶 味わいの「こつ」」 
川崎武志 中野地清香 水野学 著