硬度の高い水の国々で
緑茶を淹れるⅡ(続き)

前回からの続きです。

結果

◎エヴィアンで淹れると浄水で淹れた場合と異なる特性を感じつつも、 快適に味わうことができるもの
〔煎茶ろ〕
これは二番茶ということもあり
90℃程度の高温の湯で淹れたり少し長く抽出すると
渋味も引き出されるという特徴がある煎茶です。
エヴィアンで淹れるとお茶らしい香りは消えましたが
塩味が加わるためかむしろ渋味が軽減されて感じました。
面白いことです。

〔煎茶に〕
素直な煎茶です。
素直といっても〔煎茶ほ〕はいわゆる上煎茶なのに対し
〔煎茶に〕はやや春番にも近い軽さがあります。
結果的な萎凋もありますが萎凋香とまでは言えない程で
作り手の飾り気のないお人柄そのままのお茶と感じて
扱っています。
エヴィアンで淹れると〔煎茶は〕に同じでコクが増し
また輪郭がくっきりしました。

〔煎茶へ〕
萎凋香のある、さっぱりした口当たりの煎茶です。
エヴィアンで淹れると萎凋香は消えました。
温かいうちに飲むと、おそらく塩味由来で
ぼったり重たい口当たりと違和感がありましたが
冷えた時に飲むと渋味が解消され違和感なく飲めました。

〔煎茶と〕
萎凋香と在来由来の香りの多様さがあり
味わいが複雑で大変魅力的な煎茶です。
不思議なことにエヴィアンで淹れると
そのような香気ではなく別の香りがしました。
もはや煎茶とは思えず柑橘系ハーブティーのようでした。
一言欠点を言いたくなる気持ちとは裏腹に
味わいも決して悪くはありませんでした。

〔煎茶ち〕
意図的に萎凋させた透明感のある煎茶です。
弊店では煎茶と呼ぶには萎凋が進んでいるため
別カテゴリーにしています。
青草とか青のりのような香りではなく
人の手を入れず植物の意のままにさせた雑草のような
力強く心地よい香り。
栽培方法のためか身体への負担を全く感じない
煎茶は苦手だがこれは飲めるという方も少なくありません。
これをエヴィアンで淹れると
やはり萎凋香はないことが残念ですが
味わいにはコクが出ました。
重い不快感ではありませんでした。

◎エヴィアンで淹れると、浄水で淹れた場合の特性を強化するもの
〔煎茶は〕
そもそも濃い煎茶です。
お客様には煎茶というより野菜スープに近いと
ご紹介することもあります。
エヴィアンで淹れるとその印象が高まり
濃さが更に個性を際立たせていました。

このように大変面白い結果になりました。

纏めるとこのようになりました。
◎エヴィアンで淹れたお茶は、香気が出にくくなる。
希に別の香気を感じさせる結果になる。
◎エヴィアンで淹れたお茶は塩味が加わる。
塩味によって、不快な重みやしょっぱさが出る場合と
逆に渋味が軽減される場合がある。
◎エヴィアンで淹れたお茶は濃さ・コクが増す。

エヴィアンで淹れても快適に飲める煎茶・釜炒り茶の条件は下のようになるでしょうか。
◎香気がかなり強い。
(お茶の特性として強いというよりは
釜炒り茶のように炒ることによる釜香や
乾燥工程の火香といった
製造工程で加わる香気がある方が良い。)
◎元々さっぱりした味わいである。
二番茶以降のお茶や無施肥・肥料控えめを理由とする
さっぱりさが適している。
(うまみ、甘味がある場合は
エヴィアンの塩味や重みと合わさると
不快になる場合が多いと想像される)
この二点のいずれか又は両方の特徴を持つものが良さそうです。

地質とお茶の香味には必ず何等かの関係があります。
今回はそれに気づくことはできませんでしたが
今後のテーマの一つと考えています。
前回の、渋味の現れ方の違いは相変わらずよくわかりませんでしたが
引き続き次回も硬度の高い水に向き合おうと思います。