硬度の高い水の国々で
緑茶を淹れる

時々、外国のお客様が緑茶を所望されます。
水について知るほど、日本以外の方に
緑茶をお渡しする際の不安が大きくなる昨今です。
(諸外国は硬水である場合が大半のため)

実際、硬度の高い水で緑茶を淹れると
何が起きるのだろうか?

今回はそれを知りたく硬度300程度のエヴィアンで
複数の煎茶と玉露を淹れてみました。

エヴィアンで淹れた煎茶と玉露

二種類の煎茶を、水道水の浄水とエヴィアンで
淹れ比べました。
一つは、無農薬無施肥の煎茶
一つはオーガニックの煎茶(無農薬有機肥料栽培)です。
外国特に欧米の方は無農薬やオーガニックへの関心が強いため
そのような煎茶で実験しました。
1.2gの茶葉に、一回あたり50ccのお湯を
熱湯から一回湯冷ましして用いました。

どちらの煎茶も
エヴィアンで淹れた方の水色が濃くなりました。
その濃さは白濁に近い、やや濁った濃さでした。
香りは水道水の浄水で淹れたものより弱くなりました。
また、お茶の湯温が高い間は、
エヴィアンの方も、その煎茶として美味しく飲めましたが
湯温が冷えてくると渋味が表面に現れてきました。
無農薬無施肥より、オーガニックの煎茶の方が
冷えた時の渋味を強く感じました。

二煎目は、どちらも一煎目と同じ特徴が出ました。

大きく水の影響が出たのは三煎目。
どちらのお茶もエヴィアンの方は
味わいに大変な違和感がありました。
お茶と水の味が分離し、水の味が主張し
その水は重たく塩味があり
なまじ湯温が高いことが追い打ちをかけ
お茶の味わいを損ねていることを強く感じました。

三煎目はお茶の味がそれまでに比べて淡いことにより
水の特質が表面に現れ、それが煎茶と
うまく融合していないことが要因でしょう。

ということは、元来味わいの濃い玉露ならば
もちが良いのではないだろうか。
と推測し、二種の玉露を淹れてみました。
いったん沸騰させて室温まで冷ましたものと、
一度も沸騰していない、ペットボトルから出した水とを
念のため用いました。5gの茶葉に50ccの湯量です。

まず油かすなどの有機肥料のみを用いて栽培された
繊細な玉露を。
一~二煎目、浄水との大差はありません。
二煎目のエヴィアンの方の水色はやや白濁していましたが
玉露の美味しさは確かに感じられます。
三煎目、確かにエヴィアンの方はお茶の味が薄く
水の味の主張を隠せないのですが
調和を損ねてはいないという段階にとどまりました。

次に、非常に甘味がある、濃厚でインパクトがあり、
煎を重ねても威力が衰えにくい玉露を淹れました。
慣行栽培ですが、最もこってりした香味の玉露で
実験するためこれを選びました。
ここまでくると、一~三煎目とも香味がしっかりあり
甘味も衰えません。
四煎目以降もしばらく玉露として味わえそうです。

沸騰させたエヴィアンとペットボトルのままのエヴィアンは
特筆するほどの差異はありませんでした。

今回の結果から

香りが強いお茶
味が濃いお茶であれば、
硬度の高い水の国の人々も
長く煎を重ね美味しく淹れることが易しいかと思います。
味が濃いという特質をもともと持つのが玉露であるために
総じて、煎茶よりも玉露の方が
安定して淹れてもらえることでしょう。
但し外国の多くは、湯温を下げずお茶を淹れる文化なので
むしろ「タップウォーターを浄水しその水で淹れてください」と一言添えるのが良いかもしれません。
さもないと熱いお湯で淹れられるような気がします。

煎茶の場合硬度の高い水で煎を重ねるには向いていない
ということがはっきりわかりました。
「温度の高いうちにお楽しみください。
二煎目まで淹れられます。」
といったアドバイスでお渡しすると親切かと思います。

またそこから類推すると煎茶より香ばしさのある釜炒り茶も
外国のお客様には良い品だと分かりました。

今回の二種の煎茶の、温度が冷えた時の渋味の現れ方の違いについてはもう少し確認します。
来年も、どうぞよろしくお願い致します。