水道水と浄水Ⅲ

前回に引き続き、店頭の蛇口から出る水道水と
それを浄水器で浄水した水を比較しました。
今回は玉露です。

お茶を淹れると

水道水とその浄水を、同じ材質のやかんで水から沸かし
それを玉露用に50度以下まで冷ましました。そして
5gの玉露に、50cc程度の湯を注ぎ、2分半抽出しました。

今回は、自分たちだけではなく
常連のお客様にも試してもらい、ご意見を頂戴しました。

まず、福岡の八女玉露を。
京都の多くの玉露とは対照的で、繊細な香味が特徴です。

水道水で淹れた玉露は、口当たり重く、濃厚で
まるでお茶という液体ではなく
噛むための食べ物のような印象となりました。
お茶を含んだまま口を閉じてみると、体積は大きく感じ、
その広がり方は四角形でした。
しかし、飲みほした後、喉の奥に
苦味がじわっとにじみ出てくるような印象です。

お客様の中には、食べ物のようだ、飲みごたえがある、
「美味しい」、という声がありました。
玉露自体が濃さを楽しむお茶ですので、
豊かさが増し、味が複層的になったように感じられるのが
原因でしょう。

浄水で淹れた玉露は、口当たり軽くなりました。
口に広がる形を例えて言うならば
細長い楕円形をしていました。
舌にべたっとお茶が張り付くというよりは
舌の上に、そっと載せられるような印象です。
そして後味にはマスカットを食べた後のような
甘味だけが残りました。
本当にお茶だったのかと信じられないほどに
マスカットを食べた後と同じ後味がしました。

お客様からは、こちらの方が「お茶らしい」、
洗練された感じがするという意見を多く頂戴しました。

煎を重ねてみました。
2煎目。いずれも1煎目よりあっさりするため、
口に含んでいる時には、
水道水と浄水の差異は感じにくくなりました。
異なるのは、やはり後味。研ぎ澄まして余韻を感じると
水道水の方はざらっとした感触が残ります。
キーウィフルーツの皮肌のような細かい毛が
喉奥に存在するような印象でした。


京都、宇治田原の玉露も淹れてみました。
湯温等の条件は同じです。
うま味や甘味がしっかりのっているため、
水道水も浄水も、八女の玉露より甘く重たくなりました。

試しに、五煎目まで淹れてみました。
三煎目以降は両者とも淡くなりましたが
面白いことに、口に淹れた時に感じる温度が
異なってくるように思いました。
どちらも同じ温度まで冷ました湯を用いており、
抽出時間も同じ。同じ材質のピッチャーに注いでから
同じ材質の茶杯で飲んでいます。
それにも関わらず、水道水の方は、常温より少し温かく
浄水で淹れた方は、常温より少し冷えた印象でした。
これも、口当たりの重軽が原因だと思われます。


今回、複数の方に飲んで頂き、大変有意義でした。
皆さま、玉露の分析や感想は大体似通っていました。
しかし、どれを美味しいと感じるかまた好きかといった点は
各人によりました。

今回、ご協力くださった皆さまのおかげで
お茶は、やはり嗜好品で、
正解の形は一つではない事を最認識できました。
もうすぐ、開業から三年目となります。
お茶を学ぶのではなく、「楽しむ」ために
必要なことをお伝えしたく
基本に立ち返った内容のお茶講座を計画中です。

これからもよろしくお願い致します。