水道水と浄水Ⅱ

前回に引き続き、店頭の蛇口から出る水道水と
それを浄水器で浄水した水を比較しました。
深蒸し煎茶、浅炒りほうじ茶、深炒りほうじ茶、
煮出して飲む番茶の、愛知県の寒茶と徳島県の阿波番茶。
それ自体の香味がしっかりしたお茶や煮出すお茶なら
水道水とその浄水に大差は出ないのでは?と
予測していました。

お茶を淹れると

水道水とその浄水を、同じ材質のボーフラで
水から沸かしました。

まずは深蒸し煎茶。
深蒸し煎茶は普通蒸し煎茶よりも長い時間蒸された煎茶。
最後の工程で行う火入れがしっかりされるため
香ばしい煎茶となる傾向があります。
これを水道水、浄水で淹れたところ…
一煎目、香味は同じと感じられました。
二煎目も、知覚できる範囲での違いはありませんでした。
その後試しに、抽出した二煎目のお茶の半分を
数時間放置してみました。
お茶は、やはり温かい方が美味しく感じますし
欠点は現れにくいもの。
そのため、温度がすっかり冷えた悪条件で比較するために放置しました。
すると、浄水の方が口当たり円やか。
例えてみると、よく旅館で、室内に急須とともに置いてあるお茶の味がします。
水道水は、比較的水の味が前面に出ていました。
お茶というより水の味がする。
そして、僅かに突き刺すような渋味を感じます。

次に浅炒りと深炒りほうじ茶。
これらは、一煎目、二煎目とも、また冷えてからも
香味の差を感じることはありませんでした。
香り高さを個性として好まれるほうじ茶だけあって
その香りは、水による影響を受けていませんでした。

寒茶を煮出して味わいました。
熱湯を葉に注いでから、1分煮ました。
茶葉が入ったままの湯を煮るのですから
味わいが濃くなって当然だ、それなら
水道水と浄水に大差ないと予想していましたが…

驚いたことに、まず水色が全く違いました。
水道水の方、色は琥珀色です。
緑というよりオレンジがかったお茶。
浄水の方は、黄緑に近い色。
深蒸し茶のような緑ではなく
白ワインにも近い透明感を持った黄緑です。
香味も異なりました。
水道水の方は重くどっしりとした香りと
重量感のある口当たり。口に含むと重みを感じます。
浄水の方は軽く、鼻の付け根まで登ってくる香りと
口に含むと、軽く横に広がる口当たりです。

次に阿波番茶を、水道水と浄水で1分煮出しました。
やはり水道水の方が濃厚な水色でした。煉瓦のような色。
浄水の方は僅かに淡め。水道水のような鮮やかさはなく
くすんだような茶色になりました。
香味の印象は、寒茶の際と全く同じでした。

1分しか煮出していないからこうなったのかもしれない。
10分も煮出せば差が縮まるのでは?と実験しました。
結果は変わらず、水道水で煮た寒茶は、
まるで濃厚なリンゴジュースのように濃くなりました。
浄水の方も、1分煮出したお茶よりは濃い水色なのですが
水道水で10分煮たものより、歴然と淡いのです。
香味、口当たり、差が縮まるどころか広がりました。
水道水で煮た方は、口当たりがカクカクしており
覚悟して飲み干さなければならないような厳しさがありました。
浄水の方には角ばった感触はありませんでした。

これらを纏めると…
水道水でも、美味しくお茶を飲もうとすると
幾つかの条件があることが分かりました。
〇ほうじ茶のような香り高いお茶
〇紅茶や深蒸し煎茶のような、そもそも味わいの濃いお茶
を選ぶ。そして
〇あまり煎を重ねず、一~二煎目のみ淹れる
〇温かいうちに飲む
このようにすれば美味しく味わうことができます。
逆に言えば
〇普通蒸し煎茶や軽発酵のお茶
〇特定の個性的な香りや繊細な香りを楽しみたいお茶
〇煮出すお茶
を淹れる場合は、水道水の影響をある程度受けると思われます。
また、
〇何回もお湯を注いで煎を重ねる人
〇すっかり冷えてからも飲む習慣のある人は
浄水を用いた方が、豊かなお茶時間を
過ごせると思います。

今回、水色の違いの原因まではわかりませんでした。
水とお茶の、何らかの成分が結びついて色を成していると思われますが…
今後も検討、実験し続ける課題のひとつにしておきます。
次回、玉露と抹茶を水道水と浄水で
淹れてみることにします。