滴で味わうお茶

北陸とはいえ、やはり夏は夏。
この日々をいかに快適に過ごすか…
その一つに、氷を見て涼を取るというものがあります。

その風習は、奈良時代に遡るとのこと。
確かに、奈良の東大寺に隣接して
氷室神社という神社があります。
夏まで氷室に氷を保管し
平城京に氷を献上していたとのことです。

時を経て、江戸期には加賀藩が
氷室の氷を将軍家に献上していたと聞きます。
奈良時代のそれは、徒歩でも数時間で到達したはずですが
加賀藩から江戸へ氷を届けるなんて!
交通も発達していたとはいえ、凄いことです。

七月には、その名残を留める氷室饅頭を通じて
思いを馳せることができそうです。日本って平和ですね。

話は少し逸れましたが
今回は、お茶を氷で抽出して滴で味わうことについて
綴りたく思います。名水はまた後日。

滴(しずく)茶

弊店では、茶の皿と書いて「ささら」という茶器を
玉露を淹れるのに用いています。
それは、このような茶器です。

くぼみの部分に玉露の茶葉を入れ
茶葉がひたひたになるくらいの湯を注ぐ。
玉露ですので、その湯温は50℃以下。常温の水でも可。
数分後、ささらを傾け、滴(しずく)を味わうというものです。

喉が渇いている時にはお勧めできない飲み方です(笑)が
その濃厚さ、後味、余韻の強さのためか
数口で人を満足させる力があります。

氷で淹れるお茶

日頃は上記のように使っているささらですが
夏は、お湯の代わりに氷を浮かべてはいかがでしょうか。

上記同様に、ささらに茶葉を散らすように置き
上から湯を注ぐのではなく、その代わりに氷を載せる。
氷が解け出し、それが茶葉を湿らせ
茶葉が、まるで雨あがりの苔のように鮮やかに煌めいた頃
ささらを傾け、濃厚で冷涼な滴を注ぎだす。
目にも涼やかな滴茶となります。

ささらは、一見したところ醤油皿のようです。
弊店でもお取り扱いしていますが
ご家庭にある小皿でも、ぜひお試しください。