名水Ⅳ 子宝延命地蔵尊の水

今回は富山県の名水から。
というのも、これまで石川県内では
硬度の高い水を見つけることができませんでした。
白山比め神社の鳥居前の水が硬度80程度ですが
硬度100までは軟水と定義付けされます。
硬度100超を探していましたところ
隣の富山県は富山市泉町の延命地蔵尊の水
(以下「泉町の水」)に出会いましたので
今回はそちらをご紹介します。
平成の名水百選でもあります。

アクセス

富山駅から徒歩半時間も所要せずして到着する
富山市泉町にあります。
いたち川という川沿いにある、子宝延命地蔵尊の脇。
いたち川は、かつて大地震があった際に氾濫して
多くの犠牲者を出したそう。
そのような背景も踏まえて、川沿いには多くの地蔵尊があり
川の対岸、子宝延命地蔵尊の真向かいにも
石倉町の延命地蔵尊が。そしてそちらも
同様に水が沸いています(以下「石倉町の水」)。

水汲み場

こちらも次から次へと人が来る名水でした。
駐車場こそありませんが、脇に停める車も
絶えることがない模様です。
泉町の水は二か所の鯉の口から流れ出ます。
また、石倉町の水は三か所の龍の口から出ています。
鯉と龍、何か対抗しているのでしょうか(笑)。
それにしても、こんなに立派な水の吹き出し口は
初めて見たように思います。

硬度

硬度は110。初めての100超えです。
尚、向かいの石倉町の方は硬度100です。
水源は、調べると井戸水だと説明されてはいますが
元を辿ると立山と思わずにはいられません。
いたち川は立山の麓から伸びる常願寺川から別れた川。
更に、常願寺は扇状地を形成しており、その先端辺りが
ちょうど泉町や石倉町の水の場所に当たるとのことです。

ちなみに富山市の水は硬度30程度とのことですので
県全土に渡って硬度が高めというわけではありません。

お茶を淹れると

まず煎茶から。
日頃から飲んでいる大棟品種の煎茶を淹れました。
大棟品種はやぶきた品種との差が非常に微妙な品種で、正統派(いわゆる標準的)な香味があります。
泉町の水で淹れると、石川県水(水道水の浄水)よりも
香気は控えめ。
味わいは、日頃よりも歴然と濃くなりました。
一煎目は渋苦いということはありませんでしたが
二煎目は後味に刺々しさがありました。

次に日本の半発酵茶を。
これは、甘く強い香気が特徴のお茶です。
香気、一煎目は出ていましたが二煎目は弱々しい。
味わいは、一煎目は煎茶同様濃くもったりしており
二煎目は濃さというよりも口当たりがきつい
角ばった印象のお茶になりました。

最後に台湾の紅玉紅茶を。
紅玉品種の紅茶はミントのような清涼感がありますが
人によってはツーンとしたメントールのような香りと
受け取られて好みがはっきり分かれます。
これほど強い個性のある香気の紅茶を泉町の水で淹れると
特徴的な香気が若干和らいでいるように感じました。
二煎目の香気はさらに落ち着き
無難な香りの紅茶となりました。
味わいも日頃よりさっぱりしています。
二煎目になると、紅茶の味もするものの
水自体の存在感が前に出ているように感じました。

これらを纏めてみると、下のような特徴が認められました。
① いつもの水道水よりも香気が弱くなる。
② いつもの水道水よりも濃く重く感じやすい。
③ 二煎目になるとお茶というより水の特徴が前面に出る。
④ 二煎目になると特に、後味に水の硬さが感じられる。

水の印象が口当たりという形で
お茶の印象を決定付けているのでしょう。
煎を重ねるほどそれが感じやすくなることは
言うまでもありません。

硬度の高い水でお茶を淹れる場合
香りが強いものや、濃さを美味しいと感じられるお茶が
適しているとわかりました。
硬度の非常に高いヨーロッパ等の国には
フレーバー緑茶が一般的なところもありますが
それは理にかなったことだったようです。

もう暫く、名水を探ってみようと思います。