名水Ⅱ 大浜の水

今回ご紹介するのは白山市美川永代町の
大浜の水。
遣水観音霊水は平成の名水百選のひとつでしたが
大浜の水も同じ。
平成の名水百選である「白山美川伏流水群」のひとつ。
私たちが金沢へ移住してから三年。
大浜の水を含め美川へは複数回訪れていますが
中でも大浜の水は、季節を問わず、安定し
美味しい水と観察しています。
そして、お茶を淹れると面白い結果になる水でもあります。

水量

白山の伏流水が、数十年から百年近くかけ
ゆっくり地下を流れ湧出しているとのこと。
ウェブサイトによると美川伏流水群全体で
一日に57.6トンの湧水量があります。
伏流水は、当然水道の水とは異なり
季節や天候によって水の勢いが左右されますが、
私たちが訪れた経験の限りでは、大浜の水は、いつも
ポリタンクに気持ちよく入ってくるくらいの水量があり、
大変汲みやすい名水です。

水汲み場

住宅の中に突如としてお水の吹き出し口があります。
きっちりとコンクリートで固められており
ありがたい湧き水とか聖水と言った
霊験あらたかな雰囲気は醸し出されません。
一見、児童公園の水飲み場のようにすら見えます。
おかげで、窪み・窪地恐怖症の私には最適な環境です。
駐車場はなく水の脇に一時停車させてもらうことになるため
早朝や夜には訪れない、日中でも最低限の滞在といった
マナーが求められます。
近くには、フグの糠漬けの商店が幾つかあり
正直なところ、水以上に印象的でした。
(まだ食していませんが)

硬度

水質検査結果は現地には掲げられませんが
白山市の情報によると、硬度49。
軟水の中でも中程度の柔らかさ。
実際、誰もが美味と認定するのではないかと思います。
もちろん無臭、口に含むとさらりとして軽快、
後味もすっきりしています。
中程度の軟水という点から
お茶に向いているとも推測させます。

お茶を淹れると

弊店で扱っている煎茶、釜炒り茶、半発酵の釜炒り茶、紅茶を淹れてみました。
その日の身体のコンディションに左右されて判断せぬよう
全部で四種類の水を準備。
他の三種は
小松市波佐谷町のタンタン生水
白山市杉森町の地蔵水
店頭で用いる水道水(浄水器を通したもの)です。

お茶の香気についてはどれも同程度。
大浜の水、タンタン生水、水道水とも、
しっかりお茶の香気が感じられました。
香気を引き出すという特徴は、
軟水全般について見られるものです。

味については、タンタン生水がどのお茶もふくよかに
どっしりとした口当たり、味わいも濃く
余韻も長く感じさせたのに対して
大浜の水で淹れたお茶はどれも味わいが軽く
少々淡泊とも言えるほどで後味もすっきりしていました。
水道水は日頃と変わらず。
地蔵水は、湧き出す水量がいつもより極端に少なく
水の状態が悪かったようで、
どのお茶も苦く感じられました。

大浜の水について何よりも特徴的で面白いのは
どのお茶についても、二煎目以降、
お茶の香味が一煎目に比較して極端に薄くなることです。
この原因として考えられるのは
1 水の特徴である清涼感がお茶の香味に勝り、
お茶の香味までもすっきりと淡泊に感じさせる
2 水がお茶の成分を一煎目で引き出しきり
二煎目以降は抽出される成分が極度に減少する
このいずれかでしょう。
なおタンタン生水は、水自体に良い意味でぬめりがあり
ふくよかな口当たりをしています。
お茶がどっしりと濃く感じられた理由は
水自体の特徴がお茶の味に乗っていたのかもしれません。

地蔵水は今回偶然にも状態が良くありませんでしたが
それまでは美味しく頂戴していました。
湧き水は天候などに左右される要素を否めません。
最高の一杯のために奔走するのも素敵ですが
やはり、日々気軽にお茶を淹れることを重視すると
水道水の信頼性と日常性に勝るものはないと
考えています。