名水Ⅰ 遣水観音霊水

最初にご紹介するのは能美市仏大寺町にある
遣水観音霊水。
平成の名水百選のひとつです。
清浄で活気ある雰囲気という点で群を抜いており
こちらを最初にご紹介したく思います。

アクセス

名水というと人里離れ分け入り勾配のある道を行く・・・
場合もありますが、こちらはアクセスが楽な方と感じます。
県道55号から車一台通れる程度の道に逸れはしますが
10分もしないうちに到着。
その最後の道の両側は崖でも渓流でもありません。
運転に自信がなくても簡単にアクセスできます。
これは、水への親水性という意味で大切だと思います。

水量

ウェブサイトによると一日100トンの湧水量。
水は数カ所から汲めますし
どこからも同じくらいの量が流れ出しています。
ポリタンクでも汲みやすいくらいの十分な水量です。

水汲み場

修験者も登った女人禁制の(今は違いますが)山の
登山口付近に水汲み場があります。
山の標高は400m程度ですので
奈良の大峰山の登山口ような物々しさとは異なり
明るい空気に満ちています。
観音霊水という名称だけあり、観音堂が隣にあります。
付近の住人かボランティアの方々かわかりませんが
清掃が行き届き花が供えられ
この水が大切にされる活きている水と感じ取れます。
思わず手を合わせた上で水を汲みたくなる雰囲気。
汲みに来る人は絶えることなく
駐車場にもいつも車が出入りし活気に溢れています。
そして皆マナーがあり、後方周囲に気を配りつつ
譲り合いながらお水を頂戴している様子が見られます。
そういった思いやりの声がけがある場所ですと
気兼ねなく何度も行けます。
こちらも親水性があるという点で、ありがたいことです。

硬度

水質検査結果が現地には掲げられます。
訪れた日から3ヶ月ほど前の日付で検査されていたので
年一回程度は行われているのでしょう。
それによると硬度は6.4。驚異的なほどの柔らかさです。
硬度0-100は軟水とされますが
その中でも0-20は大変柔らかいものです。
実際誰もがまろやかで美味と認定するように思います。
絶えず人が出入りすることも
水自体の美味しさを証明しているようです。
しかし極端な軟水はお茶が渋くなるという結果もあります。
実際はどうでしょうか。

お茶を淹れると

遣水観音霊水、県水、市水、ボルヴィックで
様々なお茶を淹れてみました。
どれがどの水か知っているのは1人だけ。
後の参加者は目隠ししました。
県水の硬度は30程度、市水の硬度は25程度。
計測する時によって多少前後するとはいえ
その値ほどで推移しており
正直、この二者は、あまり硬度の差はありません。
しかし水は硬度(カルシウムとマグネシウム)だけで成らず
他の様々な成分もあって全体の香味を作り上げているので
比較するに面白いと感じて選びました。
ボルヴィックは硬度60。違いを感じさせてくれるでしょうか。

◇煎茶
静岡梅ヶ島煎茶 
福岡奥八女星野煎茶
京都童仙房煎茶
岐阜春日の萎凋煎茶

結果、煎茶に関してはどれも遣水観音霊水で淹れたものが
味のバランスが取れていると感じました。
ボルヴィックの特徴も顕著で、お茶によってはあっさりとした番茶のように変化させました。
県水、市水はあまり差異はなく、とはいえ遣水観音霊水で淹れたお茶よりも甘味は少なく、渋味は強く出ていました。

◇抹茶
遣水観音霊水だと香気が良く出ていました。
香味のバランスも相変わらず良いです。
他の三者は大差ありません。

◇半発酵茶
静岡川根の半発酵茶
静岡本山半発酵茶

◇紅茶
石川打越の紅茶
静岡菊川の紅茶

半発酵茶や紅茶の場合、煎茶や抹茶とはかなり異なる
結果となりました。
どれも、甘味を感じやすかったのは市水です。
県水もそれに続いてまろみがありました。
遣水観音霊水のお茶はどれも軽くあっさりした香味になり
他に比べて印象が薄くなりました。
ボルヴィックは、比較すると特筆することがあまりなく
可もなく不可もなく飲めるものでした。
半発酵茶や紅茶の、香りや味をしっかり感じたい場合には
遣水観音霊水はあまり適していないかもしれません。

まとめて言うと、遣水観音霊水は、口当たりが柔らかく
強い個性も穏やかにしたお茶にしてくれました。
市水や県水は、お茶の持っている香りや味の要素を
よりありのままに引き出したお茶にしてくれました。

日本はざっくり言って軟水の国ですが
その中でも個々の水の表現するお茶が異なります。
きりがないことですが、これからもぽつりぽつりと
名水とお茶について綴っていこうと思います。