水について考える

お茶を淹れる際に欠かせない、水。
お茶の成分をみてみると、なんと
99%以上は水から成ります。

水自体が衛生的でなかったり
不自然な臭いがあったりすると
当然お茶も美味しくはなりませんので
水環境を整えることは基本的で大切なことです。

一方で、日本各地にあるような名水でも
お茶との相性が合うかどうかは別問題ですので
美味しい名水なら美味しいお茶になるとも限りません。

水について考え始めると果てしない旅になりそうですが
これから何回かに分けて綴ります。

水道から煮沸まで

まず多くの方の取水源であろう
水道水について考えます。
現在の水道水である限り衛生面は良いとして
水の臭いを気にする方は少なくないのかもしれません。
臭いの原因は、ほぼほぼ
一般にカルキ臭と言われるもの。
水道水の衛生状態を保つために用いられる
次亜塩素酸ナトリウムなど
(通称、塩素とひとくくりに呼ばれるもの)による
残留塩素が原因となる臭いです。
現在、日本には、浄水処理の手法が幾つかありますが
どの場合でも、最後に消毒を行うことは変わりないため
残留塩素から免れることはできません。

こういった水の臭いを取り除く、少なくとも軽減するには
○しばらく汲み置く
○浄水器を通す
○5分以上沸騰状態を続ける
など、比較的簡単な方法があります。
(余談ですが、ただ水を美味しく飲みたい時は
氷を入れたりして冷やしたり
レモン汁などを数滴入れてしまうこともできます。
こうすると、手早く美味しく感じることができます。)

○しばらく汲み置く
汲み置くと紫外線が働いて臭みが軽減します。
そのため、夜より日中の方が早く効果が出ます。
ただ日中ですと水温も上がってしまい、
衛生的にいかがかな・・・という場合もあります。
では日陰で汲み置けば良いかというとそうでもなく
経験上、一晩汲み置いても
官能検査上臭いが消えていなかったこともありました。

また、水道水は、年間通じて毎日一定とも言えず
気候や雨量などによっても日々状態が変わります。

結論として、汲み置くという自然な手法では
臭みを安定して完全に取り除くことは難しいと感じます。

○浄水器に通す
これが基本で最も近道だと私たちは感じます。
(因みにこちらではブリタ/BRITAという
ドイツ製の浄水器を用いています。)
あくまで官能検査ですが
浄水器を通すだけで明らかに臭いが消え(少なくとも減り)
円やかになることは確かです。
浄水器によって、除去する成分は様々ですので
残留塩素を除去するものを選ぶのが良いと思います。
また、浄水器に通した上で、冷暗所で一晩汲み置くと
一段と円やかさが増すと感じます。

○5分以上沸騰状態を続ける
沸騰状態になってすぐの状態では
かえって臭いを強く感じてしまうため
長く沸騰させるように勧められます。

ここで注意が必要なのは
どのような道具で水を沸かすかによっても
大きな違いが出ることです。
こちらでは毎日銅のやかんを用いて水を沸かしています。
成分を分析したわけではありませんが
銅の素材で沸騰させることが、最もお茶にしっくりすると
感じているためです。

銅製のやかんを使う長所は
熱伝導が良いためにお湯がすぐに沸くこと(経済性)
「銅イオン効果」と呼ばれる
銅イオンによる塩素分解が進み、
残留塩素を素早く分解することができることです。

どのような道具でお湯を沸かすかにも
正解があるわけではなく
好みや生活習慣も関わってきますので
一人ひとりにとって便利な方法が一番良いと思います。
ただ、古いやかんや古い電気ケトルだったりすると
沸かす素材の臭いが水に移り
結果的にお茶の香味を変えていることも
あるかもしれません。

お茶を淹れる時には
茶葉の量やお湯の温度や抽出時間など気にしがちですが
そもそも水によっても、香味が左右されることを
改めて見直すと、楽しみが広がるのではないでしょうか。

次回は、硬度のことなどに触れます。

 

参考文献
「生でおいしい水道水」 中本信忠
「お茶の力」 袴田勝弘