大福茶

大福茶(おおぶくちゃ)は
新年三賀日や松の内に飲まれるお茶。
新年を祝福し、無病息災を願う、縁起物です。

店によって、煎茶ベース、雁金ベースと様々ですが
主には、お茶に小梅と結び昆布の入ったものです。
新年前後になると、様々なお茶屋で商品化される他
お寺の境内でも振る舞われていたりもします。

由来

緑茶飲料は清涼飲料の仲間。
その由来は、1060年ほど前の京都にあります。
当時の日本には、既にお茶は伝来していました。
しかし、現在我々が目にするような煎茶も玉露も
まだ考案されてはおらず
お茶と言えば茶葉をつき固めた
団茶(餅茶)と言われるものを
薬研でくだき細粉とし、煎じて飲んでいました。
非常に高価希少でしたので
宮中の儀式、仏尊へのお供え、医薬品等
目的も、限られていました。

そんな中、村上天皇(在位946年~967年)が
病に伏した際に
観世音にお供えしていたお茶を飲み
平復したというエピソードがあります。
また天暦五年(951年)、都に疫病が蔓延した際
六波羅蜜寺の空也上人が、お茶を薬として
病人にも振る舞われたという話も
非常によく知られています。

王服茶の名の由来の一説には、
村上天皇(王)が服するお茶からきており
いつしか今の大福茶になったと言われています。

現在の大福茶

このようなおめでたい出来事に因み
今も、関西を中心として大福茶の習慣があります。
梅と昆布の相性の良さやヨロコブの縁起担ぎから
特に新年のお茶として、梅と昆布入りの大福茶が
多くのお茶屋の定番となりました。
また今では、うめこぶ茶とか香煎茶という名称で
梅と昆布が粉末になったものも、年中入手できます。

中には、紫蘇の粉末も入っていて
「二日酔いの時にはさっぱりする」とか
「煙草を吸う人には、口臭対策の点でも良い」といった
うたい文句と共に勧められていたりも。
また、浅漬けの素としてそのエキスを使うこともできたりと
日常にも溶け込んでいます。

余談ですが、私たちは松の内の間
お白湯に小梅と結び昆布を仕込んでご提供していました。
これからも末永く、葉茶屋として新年を迎え
皆様にお茶のある空間を提供していきたく思います。

 

参考文献
「茶の世界史」 松崎芳郎子