肥料について~お茶作りではⅠ~

お茶栽培における肥料について感じていることを
引き続き綴ります。

玉露、抹茶(碾茶も含む)のように
甘味を特に楽しむお茶の原料を栽培する場合
無施肥では難しく、肥料を用いた方がよい

施肥のねらいは安定した収量と高い品質を得ること。
何を持って「高い品質」というのか・・・
これについては正解が一つではないのが面白いところ。
とはいえ一般的に言って、玉露や抹茶の世界では
高い品質=うま味や甘味に関連するアミノ酸が多い
と、とらえられています。
我々も、玉露や抹茶は、ほんの少しの量
(特に玉露の場合はたった数滴のことも)に凝縮された
うま味や甘味を特に楽しむものであり、
玉露らしい、抹茶らしい味わいのお茶を作るには
チャノキ自身が生成できる甘味の成分だけではなく
外的に、アミノ酸の元となる窒素などの養分を与えて
よりうま味や甘味を高める方が良いと感じています。
(ただし、多ければ多いほど美味しくなるという意味ではありません。)

こういったお茶に施肥を行うことは最近のことではなく
何百年前より碾茶の産地では
チャノキと同じ高さになるほどの敷草を施したり
人糞を与えたりしてきました。
19世紀半ばに製法の確立した玉露も同じことで
どの地域は食生活が豊かで人糞も割高だったなんていう
面白い話も聞き伝えられるほど
肥料を施すことは一般的なことでした。

玉露、抹茶(碾茶も含む)のように

煎茶の場合、施肥の有無や多少によって
傾向の異なるお茶になる

大きく言ってしまうと
施肥を行って育ったチャノキからは
甘味や円みがあり、ふくよかさが増した煎茶ができます。
逆に、施肥を行わなかった場合は
さっぱりとしてのど越し良く
後味も軽快な印象の煎茶になります。
全国茶品評会など、従来型の品評会の結果からは
施肥を適切に行い作られた煎茶の方が
高評価になる傾向が見て取れます。

とはいえ、飲み手が求める香味によって
どちらの傾向を選ぶかが分かれるところだと思います。
それは、例えてみると
霜降り肉のような御馳走にある贅沢感を求めるか
赤身のような飾らない淡泊さに美味しさを見出すか
その違いにも似ているように思います。

私たちが接客する日々においても
様々試された結果、無施肥の方を美味しいと感じる方も少なくありません。(続く)

 

参考文献
「日本茶の「勘所」」 飯田 辰彦 著