肥料について~始めに~

「農薬も肥料も使わないで育てられたお茶は
美味しくないのでしょうか」
といった質問を受けることが、希にあります。
きちんとお答えするには、とても時間がかかる質問です。
今回は、特に香味に影響する肥料について
我々の考えを綴らせていただきます。

冒頭のような質問を頂戴すると、正直返答に困ります。
こちらはお茶の専門店ですので
困っていてはいけないのですが(笑)
なぜ返答に困るのか?理由は二点あります。


美味しい美味しくないといった感覚的な印象は
一人ひとり異なります。
例えば、うどんひとつでも、関東風のだしが美味しい方
それは濃すぎる、関西風のだしでないと!という方
麺はコシがあるほうがいい方
柔らかいうどんが好きな方、など。

農産物にも言えます。
二十世紀梨が好きな方、幸水梨が好きな方では
「美味しい」の基準が異なるのではないでしょうか。

お茶も同じ。例えば煎茶でも
○まったりと円みがあり口当たりが柔らかい煎茶
○逆にさっぱりして猛々しさもあり爽やかな印象の煎茶
どちらも煎茶ですが、正反対の仕上がりです。
前者が好きな方が
後者を美味しくないと感じているだけかもしれませんし
逆もまた同じかと感じます。


肥料を使うか使わないか
使うならどのような肥料を、どのタイミングで
どれほどの量用いるのか
無施肥で栽培する場合でも
その他にどのような茶園管理をしているのか・・・
によって、お茶の香味は影響されます。
また、お茶を取り巻くその他多くの要素として
立地(勾配や周辺環境)、日照、土質、摘採時期、
製茶方法(蒸すか炒るか、萎凋の有無、火入れの具合等)などがあり
それら全てが結集して香味は成り立っています。

肥料の有無は、たしかに香味に影響を与えるものですが
それだけをもって良し悪しや美味しさは語れません。(続く)