お茶の香り19~台湾清香系烏龍茶・標高差~

台湾で、台湾茶の店に行くと必ずと言っていいほど出会うことができる緑の烏龍茶。
緑系の水色をした、軽発酵軽焙煎の烏龍茶です。
清香系烏龍茶/チンシアン系烏龍茶とも。
昨今、台湾茶の生産量の大部分を占める、台湾の代表的なお茶であり続けています。
中には、高山烏龍茶と書かれたものも多くあります。
高山とは、800~1,000m以上の山のこと。
台湾烏龍茶は通常、梨山烏龍茶とか阿里山烏龍茶など
〇〇烏龍茶、と命名されて店頭に並ぶことが多いのですが
時には、800~1,000mを超える茶産地であれば、特に産地名を特定せずに
高山烏龍茶と名売っていることもあります。
高山烏龍茶信仰や、凍頂烏龍茶などの名前の通った烏龍茶を好む傾向は
特に日本において強いものがあります。
台湾の改良場の方にお話しをお聞きすると
「台湾人は標高差や産地名のブランドバリューや著名度をあまり気にしていない。
例えば大禹嶺と梨山を比較した場合、標高差も僅かなので、大きく異なることはない。」
という回答もいただいたことがあります。
確かに、産地名をひとつひとつ取り上げて、ここはこういった特性がある…!などと
論じるのは、日本人らしいことのように思えます。
![]()
産地
実際、産地ごとにそれほどに異なるのでしょうか。
答えはYES & NOです。
「産地ごとに毎年、れっきとして何かしらの個性が表れる」のではありません。
「各年、各季節によって、またロットごとによって、少しずつ異なる個性となる。
その個性は変化する。
産地によって不動の個性があるのではない。」
これが実態です。
考えてみれば当然のことで、きっとワインに関しても同じような答えをいただけるのではないかと思っています。
しかしその中でも、奇莱山という産地に関しては他とは一線を画すミネラル感があります。
このミネラル感は、塩味ととらえる人もいれば、うま味と感知する人もいます。
余韻にキレがある、輪郭がくっきりしている、何か他と異なる目の覚めるような感覚がある…など
表現方法も様々ですが、確かに他産地とは違うものがあることは容易に感じられます。
実際、お茶に鉄などのミネラルが多く溶け出しているのではありません。
![]()
標高差
高山烏龍茶と高山ではない烏龍茶はそんなに違うのでしょうか。
800~1,000の壁はそんなに厚いのか…?というと
こちらも答えはYES & NOです。
800~1,000で差異が突如として表れることはもちろんなく
「標高低めの烏龍茶と、標高高めの烏龍茶は、それぞれのキャラクターや良さがある。」
これが確かなことです。
![]()
標高高めの産地の烏龍茶と標高低めの産地の烏龍茶
例えば、1,400mの産地の烏龍茶「羅」と2,100mの産地「華」の烏龍茶を飲み比べてみます。
1,400mというとそこそこ高いではないか、1,000m超えだし、とお叱りを受けそうです。
標高差が開くほど、その差異はより顕著になるとしてご理解ください。
羅は羅娜山と言う産地。大変マイナーです。
久美という産地の方がまだ知られていますが、ほぼそのあたりです。
羅娜山烏龍茶は、觀壽が皆さまにまずお勧めする烏龍茶となっています。
華は華崗です。こちらは標高2,000m超えの著名な産地のひとつ。
安定度が高い烏龍茶です。
水色
羅:比較的濃い。濃く出すとレモンイエローのようです。
華:比較的淡い。濃く出してもりんごを切った中身のような淡い色です。
お茶の浸出液の香り
羅:くっきりした香りがお茶から漂います。
その香りは重々しく厚みがあり、強い香りを持った花のようです。
例えばジャスミンとか梔子とか強い我のある香り。
しかし香りは複層的ではなく、そこに多くの花の存在をとらえることは難しいです。
華:香りは輪郭をとらえにくく、軽やかで、つかみどころがない印象があります。
口当たり
羅:比較的重め。舌に広がります。薄い層ですが重みを感じます。
華:比較的軽め。舌の上でも楕円形のような印象でふわりとしています。
味
羅:甘味と渋味があります。味わいを瞬時にしてつかみやすい。
長い時間浸けると、舌をぎゅっとつねられるような渋味が出てきます。
華:甘い湯です。きちんと時間通りに抽出していくと渋味はゼロ。
しかし長い時間浸けているとやはり渋味は出ます。
飲んでいる時及び飲んだ後の香り
羅:くっきりした強い香りのままです。飲み終わるとすっと消えます。
華:香りに、多くの小花が含まれていることがわかります。
大変繊細なのですが、いろんな香りがある。
少し緑茶めいた香りもあり、それを森林浴のようだと言う人もいます。
高山気とかフィトンチッドに由来する、とも。
その香りの持続は長く、飲み終えてからも鼻腔を奥からくすぐられているような感覚が残ります。
顕著に、甘い蜜のような香りに変わっていきます。
台湾の方は回甘/ホエイガンと表現されます。
![]()
標高差を概して言うと
觀壽では、台湾の清香系烏龍茶の標高差による個性を
〇高くなるほどにインパクトタイプから余韻タイプに変わっていく
〇高くなるほどにグラニューの甘味から和三盆糖の甘味に変化する
と表現しています。
本当に質の良い、標高の高い烏龍茶の複層的な香りは香水のようです。
お茶に精神性のようなことを語るのは好きではありませんが…
心が溶きほぐされるようなお茶です。
ぜひ觀壽の喫茶にも、お越しくださいませ。
なぜ花のような香りになるのか、そのメカニズムについては後日記します。