お茶の香り15~日本の緑茶の熟成~

熟成というと日本酒やワインのようですが、
日本の緑茶も熟成します。
他の飲料のことを詳しく存じないのですが
こちらの熟成は地味です。
できたてのお茶と比べてみると、確かに、
やや味が少し深まり、僅かに香りが変わっている、というものです。

お茶の熟成のメカニズム

日本の緑茶の熟成とは
微生物のような成分が関与して甘味やうま味が増えていくのではありません。
日本の緑茶の熟成は
苦味(カフェイン)も甘味(アミノ酸)も、時間とともに減少していく
しかし、苦味の減りが甘味の減りより速い場合に
結果として甘くなったような気がするというものです。

また、新鮮な緑の香り成分(青葉アルコール・青葉アルデヒド)も減じられます。
新鮮な香りは抜けていく代わりに、花のような香りが
際立ってくることもあります。

口切り

茶道の世界には
秋になってから春のお茶を開封するという口切りという儀式があります。
これもお茶の熟成に関連しています。

茶壺で碾茶(抹茶の原料)が保管された江戸時代
茶壺の気密性は、現在の技術による気密性に比べて低かったため
春の製茶の時期から口切りの頃までに揮発した成分は
現在よりもよほど多かったと想像できます。
それによりお茶は尖った印象から円やかな印象に変化し
また気温の低下や季節の移行とともに人の心身や嗜好が変化する。
結果として、お茶が甘くなったかのように味わえるというものでした。
口切りの時期は理にかなったものでした。

熟成が起こる環境

日本の緑茶の熟成は、適切に保管された場合にのみ起こります。
最低必要条件として、
酸素、紫外線と湿気を遮断すること。
酸素の遮断については、脱酸素剤を入れて密閉するか、真空すること。
紫外線と湿気を遮断するには、遮光性があり、通気性のない袋で密閉します。

温度は、適切であるほど、熟成が成功しやすくなります。
適切な温度は、緑茶の場合は10℃~15℃(弊店の実験結果に基づいています)。
こうすると、半年から1年で変化が出始めます。
数年経過すると新鮮香も減少し、うまくいけば花香が際立つこともあります。
しかし、日本の緑茶は新鮮さを大切にして作られているお茶ですので
5年も置いておくと古びた香りをまとい始めることが多いです。
数年のうちにはご賞味になると良いかと思います。

酸素、紫外線と湿気を遮断し
シーラーした状態で冷蔵庫(4℃程度)に入れておくと
お茶は現状維持されやすくなります。
熟成による変化は起こりにくい。或いはゆっくりになります。
例えば、冷蔵庫で適切に8年保管していた玉露が弊店にあります。
黒糖のように甘味が凝縮していますが古い印象は一切ありません。
そうと言われないと、8年も経過しているとはわからないと思います。

酸素、紫外線と湿気を遮断し
シーラーした状態であっても、
温度が25℃より高いと、好ましくない変質が起こる可能性が高まります。
ヒネ香とも呼ばれる古いお茶の香りがついてしまい
茶葉の色は赤茶色っぽく変化します。

熟成の偶然性

熟成は偶然性もあり
同時に作られたお茶でも、異なる袋に詰めているだけで
異なる変化を遂げていることがあります。
袋の大きさによっても変わります。例えば
10g詰めて保存するのと、100g詰めて保存するのとでも
熟成の具合が異なります。

もしご自宅で
真空あるいは脱酸素剤入りで、未開封の緑茶があれば
試しに1年でも、未開封のまま置いてみると面白いかもしれません。
弊店でも、いつか開封するために、緑茶を冷蔵庫と常温の二種の条件で保存しています。
いつか、ご興味のあるお客様とともに開封する日を設けたいと考えています。

それとは別に、日本の誇るお茶をあらためて知れる茶会(講座)も
夏頃に開催予定です。ぜひお越しくださいませ。