お茶の香Ⅹ~虫秘茶~

先日、ご縁あって、不思議なお茶を淹れる機会がありました。
それは虫秘茶/ちゅうひちゃと呼ばれるもの。
素材となるのは、植物の葉を食べた蛾の幼虫の“糞”。
虫の糞をお茶にした、いわゆる「虫茶」は
かねてより中国貴州省赤水市で作られています。飲んだことはありませんが…
しかし虫秘茶は、中国の虫茶とは全く別。
日本の丸岡さんという若い男性が偶然にして「発見」し
それから実験を繰り返し、ついには商品化まで至ったものです。
虫秘茶は、蛾と植物の掛け合わせによって生み出されます。
蛾にも種類がありますし、蛾が好んで食べる葉とそうでない葉も。
そのため、生みの親である丸岡さんは
特定の蛾だけを集め、それに特定の葉だけを食させ、その糞を集める…
ということを繰り返し続け
美しいフレーバーになる掛け合わせを選りすぐりロットごとに管理されています。
葉特有の香りを強く引き出したもの
滋味深い味わいに特長のあるもの
予想だにしない色を発するものまで。
そのように、日本で若い男性が何か虫の面白いお茶を手掛け商品化までされたようだという話は
以前から聞いていました。
そのため、このたびある方から虫秘茶の茶会をしてもらえませんかとお話を伺った際にも
あ~聞いていたあれか!と、情報がつながり
その結果、ふたつ返事で引き受けさせていただいたのでした。
虫秘茶の魅力をご紹介するという任務をいただき
お茶屋として何ができるだろうと考えた結果
弊店で扱っているツバキ科の茶と虫秘茶のフレーバーの重なり合いを
知っていただくという構成にしました。
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茶会
虫秘茶は多くの種類、多くのフレーバーがありますが
このたび三種類選ばせていただきました。
Ⅰ虫秘茶/オオシモフリスズメのサクラ
Ⅱ虫秘茶/オオミズアオのカエデ
Ⅲ虫秘茶/オオミズアオのクリ ×
ⅠとⅢでは、虫秘茶(糞)とツバキ科の茶(茶葉)を同じ茶器に入れて
湯をかけ、ともに抽出。
Ⅱでは、虫秘茶の抽出液を事前に作っておき
それをツバキ科の茶(乾燥茶葉)に注いで抽出。
要は、ブレンドドリンクとして提供しましたので
虫秘茶単独のフレーバーを知ってもらいにくい構成としてしまいました。
その点は申し訳なかったですが…
Ⅰ虫秘茶/オオシモフリスズメのサクラ × 茶/玉緑茶
サクラの虫秘茶はとてもわかりやすく魅力的なフレーバーです。
本当に誰が飲んでも、何も事前に告げられなくても、それが桜のお茶だと気づくほど。
丸岡さんによると、クマリンと杏仁のような香気成分が二大成分で
香気の構成としてもシンプルだそう。
シンプルなフレーバーなら複雑な滋味のお茶を合わせたい
しかも桜は春のもの。やはり新緑を思わせる緑茶と合わせたい。
さらに、虫秘茶は90℃程度の高温の湯で淹れることが望ましいとのこと。
高温に耐えられる緑茶ということで、玉緑茶を合わせました。
玉緑茶は煎茶とほぼ同じように作られますが
高温の湯で淹れた際に、比較的、煎茶より渋味が出にくいです。
Ⅱ虫秘茶/オオミズアオのカエデ × 茶/玉露
ツバキ科の乾燥茶葉を虫秘茶で抽出することで
両者のフレーバーを一度に味わってみたらどうなるだろうという試みを行ってみました。
カエデの虫秘茶は事前に作っておき、常温まで冷ましておく。
それを静岡の無農薬の玉露に注ぎ、抽出してもらい
飲んだあとは茶葉も召し上がってもらいました。
実はこの日のため、お菓子屋さんにも
虫秘茶を使った琥珀や最中を作ってもらっていました。
最中の皮のぱりぱりしたところに
飲んだ後の玉露を載せて食べてもらってもかまいませんよとアナウンス。
こわごわ試してくださった方も何人かおられました。
カエデは後述のクリとも似ていますが、少しだけ薬草茶のようなフレーバーがあります。
ヨモギ茶、クロモジ茶、明日葉茶、杜仲茶、そしてカエデ茶と並び称されるイメージです。
とはいえクセもない、飲みやすいお茶でした。
Ⅲ虫秘茶/オオミズアオのクリ × 茶/白茶
クリは三つのお茶の中で最も好評でした。
丸岡さんによると、クリが最も完成度の高いフレーバーだそう。
まず、中国の白茶を普通に提供し
その二煎目からクリの虫秘茶を加えて、一緒に湯で抽出しました。
白茶は緑茶、烏龍茶、紅茶のどれとも通じるフレーバーがある
それでいて、全体としては淡いお茶です。
そのように、いろんな味がするお茶である白茶とクリの虫秘茶は
相性も合っていました。
クリは、丸岡さんによると、香ばしさとほんのりした甘さがあるとのこと。
ルイボスティーにも通じるものがありますが、もっと複層的なフレーバーでした。
「美味しい~!」という声もお客様から多く聞かれました。
私としては、これを最後のお茶にもってきて良かった…と安堵しました。
この茶会では、石川県の九谷焼の窯元とひとつである
錦山窯さんの会場ギャラリーを会場として、そちらのお道具を全面的に使わせていただきました。
高価なお道具ばかりでしたが、気づいたら自然体で使わせていただいていました。
何もひっくり返したりしなくて幸いでした…
虫秘茶にはまだまだ味わい方の可能性があると感じました。
フレーバーが大変強いので料理やお菓子に用いることもできます。
ジンとしての商品開発も進んでいるとのこと。
お茶の成分や健康機能もまだよくわからず
ベールに包まれた部分が多い、虫秘茶。
お茶会も適宜行われているようですので、ぜひ情報をフォローしてみてください。