お茶の香りⅨ~焙じと焙煎~

今回は「焙じ」と「焙煎」のことを。
「焙じ」と聞くと、ほうじ茶をイメージしますが
「焙煎」と聞くと、コーヒーをまず思い出される方が多いのではないでしょうか。
お茶の世界にも「焙煎」という技術があります。
中国語では烘焙/ホンペイ。
「焙じ」とは全く別の技術です。
日本では「焙煎」するようなお茶はほとんど作られていませんので
馴染みも薄いことと思いますが
台湾の鉄観音茶や、伝統的な凍頂烏龍茶には「焙煎」が施されています。
店頭では開業当初よりずっと
「焙じは緑茶をコーティングするようなもの。
金太郎飴のように割ってみると、中は緑のままで淵だけが焙じによって茶色くなっています。
一方、焙煎は茶葉の中央までじっくりと火を突き通すようなイメージ。
同じく割って断面をみると、中まで全部茶色です。
焙煎された烏龍茶には花や熟した果実のような香りがあります。」
というようなご説明をしてきました。
開業からそろそろ10年近くになる今、もう少し掘り下げてみます。
![]()
焙じ
ほうじ茶は緑茶を焙じたものです。
ほぼほぼ完成した緑茶で、そのまま緑茶として飲めるような状態の茶葉を
焙じて作られます。
そのため、ご家庭でも、焙烙/ほうろくやフライパンを使って
緑茶からほうじ茶を作ることができます。
「焙じ」は150℃程度から200℃程度までの温度で
数分から長くとも15分程度かけて緑茶に熱を加えます。
焙じるための機械も様々で、それぞれの焙じ業者や店舗の妙味が出ます。
かくいう加賀棒茶も本当に面白いです。
先日、日本茶インストラクターで
加賀棒茶を飲み比べする文化講座を実施させていただきましたが
香りの軽やかなものから重々しいものまで
すっきりした味わいのものからこっくりしたものまで、いろいろでした。
このような熱の加え方をすると茶葉に含まれるアミノ酸と糖が酸化反応を起こします。
茶葉に含まれているテアニン、グルタミン酸やアスパラギン酸のようなアミノ酸と
炭水化物の一部である糖が反応するためです。それはメイラード反応といって
様々な料理にも同様にみられる反応です。
ほうじ茶の香ばしい、甘い香りはこのように生成されています。
![]()
焙煎
焙煎は全く別の方法で行われます。
温度は80℃程度~110℃程度の間で、長い時間をかけて、しかも3~4回にわけて火を加えます。
一回あたりの時間は長ければ10時間程度。
そしてその10時間が終われば、いったん3~4日間ほど茶葉を休ませます。
その間に茶葉の温度が下がり、水分が戻ります。
そして二回目の焙煎を、同じ程度の時間と温度で施し、また休ませる。
これを3~4回繰り返すのです。
上記は私どもが台湾で鉄観音や凍頂烏龍茶の作り手に教えてもらった内容です。
中国の岩茶など、焙煎した別のお茶についても、
それぞれにふさわしい温度帯や時間、回数があることでしょうが
そちらは詳しくありません…
ほうじ茶の「焙じ」と焙煎烏龍茶の「焙煎」が
どれほど異なるかがはっきりしたことと思います。
これほど異なるならば、「焙煎」の場合は「焙じ」とは別の反応が起こり
それが別の香気を生み出しているに違いない。
だから焙煎烏龍茶には花や果実のような香りがあるに違いない。
続く
参考文献
「珈琲焙煎の書」 小野善造 著