お茶の香りⅤ~摘まれたお茶の葉の気持ち~

今回も香りのことを。
もうすぐ若葉の季節。(北陸ではまだちょっと先ですが。)
新茶の茶摘みの香り漂うのもその頃。
こちら北陸では茶畑があまりないため、
新茶の香りの思い出も特にないのかなと思っていました。
が、実際はそうでもなく、こども園でお茶講座していても
先生方が新茶の香りを懐かしまれます。
やはり、あの独特の香りの記憶は
過去のものだったとしても、ちゃんと残っているのですね。
二番茶や三番茶には、新茶のような新鮮な香りは強く含まれないことがわかっています。
ますます日差しが右肩上がりになる、春の明るさの中に漂う
新茶の茶摘みの時にしか感じられない青々とした香り。
人にとっては香りのご馳走で、豊かな思い出にもなり
疲労回復効果やリラックス作用もあります。
その時お茶の葉には何が起きているのでしょうか。
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葉の香りの変化
春の若葉の香りは、生物に有害な過酸化脂質の除去や
昆虫から植物を守ることに役立っています。
チャノキの葉が障害を受け(葉を摘みとったり、表面に触れたりひっかいたり)たり
昆虫などにより食害を受けると
「みどりの香り」は、さらに強まります。
その正体は、青葉アルコールや青葉アルデヒドと言われるもの。
葉の中にある脂肪酸(リノレン酸)の一部から
葉に含まれる酵素の作用で生成されるものです。
この香りを強めることで、他の植物にも警告を発しています。
また、先ほどの脂肪酸(リノレン酸)の残りの一部から
ジャスモン酸やジャスモン酸メチルも急激に増加。
ジャスミンのような香りが発せられます。
そしてジャスミンのような香りのスイッチにより防御遺伝子を発現させ
ストレスへの耐性を獲得しています。
このように、チャノキを含め植物の香りは
昆虫、病原体、草食動物からの保護機能を持っています。
もちろん、人間からの保護機能も。
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緑茶の製茶では
実際、お茶の葉を摘んで、しばらく何もせずに置いておくと
青々とした香りの後に、ジャスミンのような香りが出始めます。
しかし、緑茶からジャスミンのような香りがすることはあまりないと思います。
緑茶においては、花のような香りよりも青々とした「みどりの香り」の方が大切にされているため
ジャスミンの香りが出ないようにコントロールしながら製茶工場に運び
葉を蒸熱するためです。
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摘まれたお茶の葉の気持ち
人は新茶の茶摘みや製茶工場で良い香りを嗅ぐことができます。
その時お茶の葉は
「わぁ…何するの!他の植物にもこの異常事態を知らせなければ!」とか
「もうちょっと待ってもらったら、私から花の香りがするのに~!」などと
思っているのでしょうか。
ますます、ありがたい気持ちでお茶に向き合いたく思いました。
参考文献
「新版 緑茶・中国茶・紅茶の化学と機能」 伊奈和夫 ほか共著
「嗜好品の香りと健康」 青島 均 著