お茶を淹れる道具の話Ⅻ~まとめ~

お茶を淹れる道具について二年ほど書いてきました。
今回はまとめを綴ります。
お茶を淹れる道具の目的は非常にシンプル、たった二つです。

① 乾燥したお茶の葉や芽や茎を、湯や水に触れさせ、
それらの秘めている香りや味わいを湯や水に染み出させること
② ①の抽出液を適切に濾し、注ぎ出すこと

もっと平たく言うと、
① 茶葉の香・味を引き出す
② 濾す
以上。
それができるなら、鍋と濾し器だけでもいいのではとすら思えてきます。

世の中に多くの道具があるのは、①香・味の引き出し方や②濾し方が異なるため、とも言えます。
どのように異なるのか、ざっくりとまとめましたので
よろしければお読みください。

香・味を引き出す

香・味の引き出し方は、大きさ、素材、形状によって特性があります。

大きさ
大きい道具では湯温が下がりやすいので香・味を柔らかく引き出します。
しかし、あまりに大きいと抽出液を注ぎ出すのに時間がかかるので
注ぎ出しているうちにもどんどん濃くなりがちです。
つまり、大きい道具は、香・味のコントロールが難しくなります。
逆に、小さい道具は、自分好みにコントロールしやすいです。
大小の境目は、250~300cc程度。

素材
焼き締めの陶器(炻器)は、味わいを円やかにしますが
それ以外の素材は、概して香・味をそのままに引き出します。

陶器は保温性が高いので香・味を強く引き出し、濃くなりやすいです。
磁器やガラスや合成樹脂は、陶器より保温性が低いので、やや柔らかく引き出します。
なお、最近見かけるようになったトライタンという新素材は、
陶器よりさらに保温性が高いです。
しかし使い始めは特に、素材の臭いが気になります。

形状
蓋が大きいと湯温が下がりやすいので香・味を柔らかく引き出します。
蓋が小さくすぼまった形状だと保温性が高いので
香・味を強く引き出し、濃くなりやすいです。

濾す

カップ網のようにかぽっと取り除く場合は、さっぱりした香・味になります。
濾し部分が取り外しできない場合は、網目や注ぎ口の面積が大きいほど、
また網目が粗いほど、香・味はさっぱりします。

ざっくり、多少乱暴に分類しましたが、大きく間違ってはいないはず。
上の要件が意のままになり、好みのデザインで、室内空間にも合う道具に出会えるなら
その方のお茶時空間は、大変豊かなものになることと思います。

次々と新しい茶器が生み出されている昨今です。
しかし、どんなに秀逸と言われても、
クラウドファンディングで人気を博しても
自分のニーズに応えていなければ無意味になってしまいます。
どのようなシーンでどのようなお茶をどのように飲みたいのか
このイメージをクリアにすることが大切。

私たちにお手伝いできるなら、喜んでさせて頂きますので
何でもお気軽にご相談くださいませ。