お茶を淹れる道具の話Ⅷ
~茶海・聞香杯Ⅴ~

今日は私たちが台湾で見た茶会の様子をご紹介します。

台湾で一年お茶を学んでいた間にも
そこここで、茶会は開催されていました。
ホテルの大宴会場や催事場のような室内空間
或いは庭園の一角のような野外の茶会もありました。
沢山のお茶の淹れ手が自身の道具を携えて集まり
自分に与えられたテーブルを
思い思いにしつらえ、呈茶します。
淹れ手の多くは、陸羽茶芸のような教室や
個人教室で茶芸を学んだ人たちです。
お客様の方は参加費を支払い
どこでも気の向く淹れ手のテーブルにつき
数席巡ることができました。


使う道具の種類も人によります。
テーブルクロスやお花も思いのまま。
土瓶で湯を沸かす人、電気ポットを持ち込む人。
茶壺(急須)で淹れる人、蓋碗で淹れる人。
聞香杯を用いる人、用いない人…色とりどりです。
また古琴や二胡の演奏もつきもの。
次第におしゃべりにも花が咲き、
まるでそれは披露宴の空気が次第に温まり
ご歓談が弾んでいく様子と似ていました。

淹れ手の誰しも、お茶を介して人を楽しませることを願い
広い心で温かく、どのお客様も迎え入れる。
お客様には特段作法が求められることもありません。
ただただ、淹れてもらうお茶とは本当に美味しいなぁ…
と安らぎました。

香港の工夫茶

弊店の店主は2019年3月香港に茶旅した際に
工夫茶を頂く機会に恵まれました。
香港の工夫茶は潮州式とも言います。
工夫茶と台湾茶芸は、似て非なるものでした。

急須の容量は80cc程度、茶杯は大変小さく20cc程度。

始めに沸いたお湯を急須に入れて急須を温め
その間に茶葉を準備。
急須が温まると茶杯に湯を注ぎ茶杯も温める。
急須に10-15gほど茶葉を入れ熱湯を注ぎます。

→濃いです!でもそれがたまらなく美味しいのですが。

抽出中に工夫茶の特徴である茶杯の洗いを行います。

その後、1煎目のお茶を注ぎます。

→茶海と聞香杯は使いません。直接茶杯に注ぎます。

すぐさま茶壺に湯を注ぎ、1煎目が入っている茶杯の茶を
急須の蓋の上からかけます。

→1煎目は飲まず、さりとて流すのでもなく
急須のために使うのが面白い。

そうして少し時間を置き、2煎目が抽出されるのを待ち
それを茶杯に注ぎます。
注ぎ終わると茶杯を取るようにお客様に促し
ともに味わいます。

工夫茶を日常とする人は家だけでなく外食にもお茶持参。
香港の劉さんと朝から外食した際も
食後には劉さん持ちこみのお茶を何煎も飲み
話が止まらない。
お茶があること、また美味しいことは大前提。
その上でのコミュニケーションが不可欠。

台湾茶芸は美しく、人と人との心の触れ合いもあり
素晴らしいものでした。
そして、香港の工夫茶も、それはそれは
成熟した、日常に根ざしたお茶の姿でした。
お茶の潤滑油としての姿が、どちらにもありました。