お茶を淹れる道具の話Ⅷ
~茶海・聞香杯Ⅴ~

台湾茶芸の基礎となった工夫茶の手順のことを
今回はお話しします。
「隋園食単」「夢廠雑著」「清稗類鈔」など
中国の文献にも記されますが
残念ながら私には原文は読めません。
明るい方により翻訳された「清稗類鈔」を
私がさらにかみ砕いて道具と手順をご説明します。
(ちなみに中国大陸の方が発信する動画も見逃せません。
なんせわかりやすいですから。)

工夫茶の道具

陸羽の『茶経』に記されるような道具に従いつつも
改善されています。
風炉は筒の形で高さ約30センチ、白泥で造られます。

急須は宜興で焼成されたものが最高です。
急須は丸く中央が膨らみ注ぎ口が突出し
取っ手は曲がっています。
大きいものは500ccほどの水が入ります。

湯のみや茶盤は白磁に花柄、内外に細かく
山水人物が描かれます。古典的です。

風炉、急須と茶盤(お盆ではなくお皿です)は
それぞれ一つずつ準備します。

湯のみは客の数だけ準備します。
それは小さく茶盤は満月のようにまん丸です。

長方形の茶盤に急須一つと湯のみ四つを
置くこともあります。

急須がこぶしのように小さいものもあり
湯のみはクルミのように小さいものもあります。

ほかに土鍋や棕櫚(シュロ)の敷きもの(急須の下に敷くため)・扇子・竹挟も使います。
どれも質朴で雅です。
急須と茶盤と湯のみは古いものが良いです。

工夫茶の手順

泉の水を鍋にため細かい炭で沸かし茶葉を急須に入れ
急須に湯を注ぎます。
急須の蓋をして急須の上からもう一度お湯を注ぎ
続いて急須の中のお茶を注ぎ出します。
粉々の葉は水ですすいで取り除き
大きな茶葉を急須に残しておきます。
またお湯を急須満杯に注ぎます。
蓋をしてお湯を急須の上からかけ
茶盤に湯がいっぱいになったら、茶巾で急須を覆います。
しばらく待ってから茶巾を取り湯のみにお茶を回し注ぎし
お客様に出します。
お客様が慌てて飲むと、風雅ではないとして
亭主が怒ってしまいます。

洗茶する?しない?

これを見ると一煎目は流しているようにも受け取れます。
実際には、香港や台湾では
一煎目を飲まずに流す(洗茶)する人としない人がいます。
洗茶の有無については特に決まりはありません。
お茶を淹れるテクニックの一つにすぎないので
とらわれないようにしてください。
一煎目も美味しいと淹れ手が思えばお出しすればいいし
まだ香味が開いていない、雑味があるなどの理由で
お出ししなくても間違いではありません。

次回は工夫茶や台湾茶芸の現地の様子を
ご紹介します。

参考文献
「現代中国茶文化考」王 静 著