カフェインとの付き合い方

カフェインは諸刃の剣のようなものかもしれません。
眠気覚ましになり気持ちが高揚するのは喜ばしいけれど
人によっては寝つきが悪くなったり頭痛など生じる場合も。
妊婦さん、子供やお年寄りは飲まない方が良いかのように報じられることもあります。
しかしどなたの場合も、一滴も摂取してはダメ!
という意味ではありません。

今回は、漠然とカフェインに不安を抱える方が
すっきりとした、また楽な気持ちでお茶と向き合えるよう
数値もお示ししながらご説明します。

カフェイン摂取には年齢や状況に応じた適量がある

悪影響がないとされる一日当たりカフェイン最大摂取量が
様々な機関から示されています。
もちろん個人差もあるのですが
参考になると思いますので、ここに列挙しておきます。
括弧内は示している機関名です。
妊婦:300mg(世界保健機構)
授乳中の女性:200mg(欧州食品安全機関)
健康な子ども及び青少年では
子供の体重1kg当たり:2.5mg
4~6歳:45mg
7~9歳:62.5mg
10~12歳:85mg
13歳以上:子供の体重1kg当たり2.5mg
(ここまでカナダ保健省)
健康な成人:400mg(欧州食品安全機関・カナダ保健省)

数値はお示ししましたが、これでは何を何杯飲めるのか
全くわからないと思いますので
次に茶種別のカフェイン含有量をお示しします。

お茶の種類によって含有カフェイン量が異なる

内閣府の食品安全委員会によると
煎茶の茶葉10gに90℃の湯430mlを注ぎ1分抽出すると
カフェイン量は100ml当たり20mg
紅茶の茶葉5gに熱湯360mlを注ぎ1.5分~4分抽出すると
カフェイン量は100ml当たり30g
玉露の茶葉10gに60℃の湯60mlを注ぎ2.5分抽出すると
カフェイン量は100ml当たり160mg
含まれているという結果が出ています。

覚えるのは大変ですのでざっくり申し上げると…
抹茶のカフェイン量は他の茶種に比べて多め。
一服当たり60mg程度というデータもあります。
抹茶は溶出された茶液を飲むのではなく
葉っぱ全てを取り入れるようなものですから当然成分も多く
成分の一つであるカフェイン量も多くなります。

玉露のカフェイン量も他の茶種に比べて多めです。
玉露は濃厚さを賞味するお茶ですので
一回あたりに用いる茶葉量は多め
逆に湯量は少なくして淹れます。
必然的に成分が濃縮されたお茶となり
少量の摂取でもカフェイン量は多くなります。

ほうじ茶のカフェイン量は比較的少ないです。
生葉中の成分は、春先はふんだんに含まれますが
冬になるにつれて減少していきます。
また、枝先の芽や一枚目の葉の成分は多く
枝の下の方になるにつれて減少していきます。
ほうじ茶の原料になるような葉は往々にして一番茶ではなく
春番茶、二番茶や秋冬番茶といった
遅い時期に摘採されている場合が多いです。
さらに、摘採する際には枝の下の方の
大きく硬く成長した葉まで摘む傾向があります。
そのため、ほうじ茶のカフェイン量は少ないのです。

それ以外のほとんどのお茶の
100ml当たりのカフェイン量は僅差です。
煎茶も烏龍茶も紅茶も、特筆するほど差はないと
認識していただいてまず間違いありません。
(あくまでの日本茶の範疇の話です。
例えば中国茶は銘茶と呼ばれるものだけでも2,000ほどありますから…)

カフェインの溶出量はお茶の淹れ方で大きく異なる

同じ茶葉を用いていても
茶葉量、湯量、湯温、抽出時間によって
成分量はいかようにも変動します。
茶葉量、湯温、抽出時間が上がると
溶出する成分量は増えます。
そのため抽出されるカフェイン量も増えます。
カフェインは特に、湯温によって
溶出される速度が変動しやすい成分です。
90℃の湯で1分抽出すれば70%溶出しますが
60℃の湯を用いると1分後に40%も溶出していないという
データがあります。

そのため、どうしてもカフェインを摂取したくない時は
一煎目を高温で抽出しカフェインを十分溶出させてしまい
その一煎目は飲まずに流し
二煎目から飲むという方法もあります。ご参考まで。

逆に、湯量が増えると溶出された成分は薄まりますので
100ml当たりのカフェイン量という意味では
相対的に減ります。

ちなみに、水出しはノンカフェインであるかのように
宣伝されることがあります。
これは、湯温が大変低いためカフェインの出方が
非常にゆっくりであるためです。
しかし、ゼロではありません。
20℃の水で20分抽出すれば70%溶出しているという
データもありますのでご留意ください。

終わりに

SNSなどでは「~と聞いた」「~らしいです」といった
情報でも拡散されてしまいます。
そういった論拠のない情報を正しい情報に訂正し
その根拠もお示しするのが専門店の仕事です。
これからも、お茶に関して疑問に思われることがあれば
お聞きください。
できる限りご参考になるような情報をご提供していきます。

参考文献
「日本茶インストラクター講座Ⅱ」NPO法人日本茶インストラクター協会 
「緑茶とコーヒーの機能性とカフェインを考える」白井 満