お茶を淹れる道具の話Ⅺ
マイボトル生活推進してます

昨今耳にすることの増えた
「マイボトル生活」というフレーズ。
使い捨て容器に入ったドリンクを購入するのではなく
何度も洗って使い続けられる自分の容器を持ち、
そこに好みの飲料を入れ外出時などに持参ようという動き。
珈琲でも実践している方は多いことと思います。
作ったお茶を入れて持ち運ぶことはもちろんのこと
そこに茶葉を入れ、魔法瓶で持ち運びつつ抽出し
まるでお茶を淹れる道具のように活用することもできます。
ただ、いずれの場合もちょっと注意点があります。

今回は魔法瓶でお茶を持ち運ぶ際のコツについて。

魔法瓶のお茶を美味しい状態で持ち運ぶために~お茶を変質させる要因~

まず、お茶を淹れる前の乾燥茶葉について。
乾燥茶葉を変質させる要因は4つあります。
紫外線・酸素・温度・湿度です。
(お茶の保存は別のコラムでご説明したので省略します。)

淹れたお茶を変質させる要因もこれに類するのです。
魔法瓶の中を想像してみてください。
密閉されているので、紫外線に晒されることや
酸素の出入りは
防いでいます。
乾燥茶葉には大敵の湿度ですが、
淹れたお茶については考慮しなくて構いません。

温度はどうでしょうか。
魔法瓶は保温する容器なので
お茶の温度は保たれています。
飲み手にとっては喜ばしいことですが
魔法瓶の中のお茶はあまり喜んでいません。
中にある茶液や茶葉は熱し続けられているようなもので。
実は、茶液や茶葉に負荷をかけています。

実際、緑茶の茶葉を入れた魔法瓶に
沸かしたての湯を容器の総容量まで注ぎ、蓋をした場合
(例えば4gの茶葉に400ccの湯)
2時間後、まだお茶は80℃程度の高温。
この時既に、通常のお茶とは異なる臭いを発し始めます。
4時間程後、60℃代まで下がりますが
飲用に相応しくない程度にまで香味が変質しています。

茶葉が浸しっぱなしになることで茶液が濃くなり
味わいバランスが崩れたのではありません。
明らかにお茶とは異なる異臭が漂うのです。
(茶葉がもったいないので、
皆さまはお試しにならないでください。)

魔法瓶のお茶を美味しい状態で持ち運ぶために
~淹れ方~

このように、魔法瓶の中のお茶は、
あまりに高温ですと変質が早くなります。
変質しない程度の温度にしておけば、
半日以上美味しく飲用できます。
温茶として美味しく飲め、かつ品質を保持できる温度は
70~60℃です。

具体的にいくつかご紹介します。
葉入りⅠ 茶葉を入れた魔法瓶に
80℃程度の湯を容器の総容量まで注ぐ
→魔法瓶に注いだ時点で70℃強。
3時間後には60℃程度まで下がり、その後半日飲めます。

葉入りⅡ Ⅰの半分以下の量の茶葉を入れた魔法瓶に
沸かしたての湯を容器の半量まで注ぐ
→注いだ時点では90℃程度の高温ですが、
容器の半分は空気で満たされるため
内部の温度が下がりやすくなります。
3時間後には60℃まで下がり、その後半日程度飲めます。

葉入りⅢ 茶葉を入れた魔法瓶に br>沸かしたての湯を容器の半量まで注ぎ、
そその上から常温の水を残りの半量注ぐ
→常温の水を注ぐことで茶液は一気に60℃程まで下がり、
その後半日飲めます。

葉なしⅠ 他の容器で淹れたお茶の温度を80℃程度まで下げた上で魔法瓶に注ぐ
→魔法瓶に注いだ時点で70℃強。
33時間後には60℃程度まで下がり、その後半日飲めます。

冷茶の場合
冷茶はもともと温度が低い状態のお茶ですので、
高温による変質は起こりません。
むしろ逆に、魔法瓶を開け閉めするだけでも、
冷たかったお茶が生温かくなっていきます。
冷茶を欲するような季節は特に生ぬるくなりやすい。
冷たかったお茶がぬるくなると、残念な結果になり
美味しさが減じられる場合が多いです。
冷茶を魔法瓶で持ち運ぶ際は氷も入れるのがお勧めです。

今回は、最も変質しやすい不発酵茶の緑茶で
実験した結果をお伝えしました。
半発酵茶、焙煎したお茶、発酵茶など、
加工を加えたお茶の方が変質の速度は緩やかになります。
持ち運ぶ季節、魔法瓶を開け閉めする環境の温度帯、開け閉めの回数、魔法瓶の違いによって若干の差があることもご了解ください。
今回用いたのはTHERMOSの魔法瓶。メーカーによっても
保温力は異なりますので予めご了承ください。

魔法瓶のお茶を美味しい状態で持ち運ぶために~相応しい茶種~

お茶は嗜好品ですので、各人の嗜好に合うお茶であれば
何でも魔法瓶に入れて持ち運べます。
茶葉を入れた状態で持ち運ぶ場合は下をご参考ください。
大きいポーションの茶葉を選ぶ
→魔法瓶の底に茶葉が沈みやすいため、
うっかり茶葉が口に入ってきにくいです。
味わいバランスの崩れにくい茶葉を選ぶ
→言わずもがな。

魔法瓶のお茶を美味しい状態で持ち運ぶために~容器のお手入れ~

飲料を密封し保存しているため、魔法瓶の内部は
毎日よく洗うのがお勧めです。
水洗いだけでなく長い柄のタワシを用いるのが理想的。
柄は半分に折りたたまない物がいいです。というのも
毎日のお手入れ時には、折りたたまれたタワシを
伸ばすことも手間に感じられますw…
また、内部に染みができたら漂白剤を使うこともできます。

パッキン部分も汚れがたまりやすいです。
汚れ自体は茶渋にすぎないので、
ようじなどでこするとすぐに取れますが
うっかりパッキン部分を取り付け忘れて
魔法瓶を持ち歩かないようお気を付けください。
大参事が起こります。

皆さま、良いマイボトル生活をお過ごしください。