あらためて所信表明

2016年11月に開業した私ども。
先月で、5年が経過しました。
つくづく、継続してこれたことに感謝しています。
周りの方々の優しさのおかげです。

茶舎觀壽の柱は3本ありました。
1.シングルオリジンを主とする様々な日本茶

シングルオリジンは単一農園・単一品種のことです。
作り手の顔、土地柄、チャノキの個性が「見える」お茶です。
産地を巡り農家さんにお会いし圃場を拝見し
それをお客様にお伝えしてきました。

2.現地で1年過ごした経験と繋がりを活かした台湾茶
現地で得たご縁の中から 
お人柄も良く高品質のお茶を作られる
茶農家或いは焙煎師から仕入れをしております。

3.学び続けている茶道・抹茶
この3本です。
日頃からこのような柱について吹聴していませんので
「あら、そうだったの。」と思われることでしょうが…(笑)

5年を経て

今、自覚していることが3点あります。

シングルオリジンが素晴らしい一方で
合組(ごうぐみ)技術も貴重であること。
合組とは、ブレンドのことです。
人並み外れたお茶利きである茶師が
様々な年度や産地や品種のお茶を合組することで
年間を通じて一定量のお茶を一定の価格で安定して供給しています。

スーパーや街のお茶屋さんで、
いつも同じ味のお茶を同じ価格で求められるのは
合組を、事もなげに行っている方々のおかげです。


日本の茶農家さんを実際に訪問してきたことで、直面した問題があります。
生産者の減少です。
なぜ減少するかというと、後継ぎがいないからです。
後継ぎがいないのはなぜか。
お茶で生計が成り立たないことが一番の理由です。
「継がせられないので子供には他の仕事をさせる。茶業は自分でおしまい。」
これまで訪問してきた農家さんだけを思い返しても
このように仰る方は少なくありません。
「30年前は、子供2人を大学まで行かせてあげられた。
同じ面積の土地を持っていても、今の状況では無理。」
これは実際にある茶農家さんから聞いた生々しい声。
このようなことが日本中で起きているのです。
お茶の価格を下げ続けてきた茶業界自身の
内部的な問題が根源にあります。

一方で
価値をうまく提示し上手に発信することで
広くファンを得て産直で販売、または
問屋と適性価格で関係を保ち生活する茶農家もいます。
兼業農家として米や果物なども合わせて生活される方、
ホテルやレストランと強固に繋がり安定収入を得る方、
広大な土地を管理することで成り立つ地域や茶農家も
おられ、また他の形もあるでしょう。
私どもは小さな販売店ですので
仕組みを変えるような政策を打ち出すことはできませんが
担い手不足が深刻な問題であることを
せめてお伝えしたく思います。


嗜好飲料の中でお茶とはどういう位置づけなのでしょうか。
例えば珈琲は
個人で思索にふけったり、何かに集中したり、作業に没頭したり、創造性の高い何かに従事たりする際に
選ばれる飲料であるように思います。
珈琲を飲む人の間でコミュニケーションが生まれ
話も弾むというよりは
自身に目を向けさせやすい飲料だと、私は感じます。

イメージですが、アルコール飲料の中でも
ウイスキーは上記の珈琲に近い意味合いで
飲まれているように思います。
(アルコールは詳しくありません。違ったらすみません。)

お茶はどうか。
珈琲のほぼ真逆だと思います。
お茶も珈琲同様にカフェインを含むため
集中力が増し眠気を覚ます傾向があります。
しかしその一方でテアニンというアミノ酸の一つにより
精神が安定し鎮静化します。
要は、お茶は、何かに盲目に没頭させにくい飲料です。
なぜかというと
安定して鎮静化した精神状態にある人は
自ずと周囲にも目を開き思いを馳せるからです。

お茶は、自身の内側に目を向ける飲料ではなく
周囲と繋がる性質を持っています。
1人で淹れて飲んでいるとしても
他者に思いを馳せさせるような飲料です。
抹茶ももちろん同じ。
1人で自主稽古し自服の抹茶を飲んでいる時も同様です。

世界の嗜好飲料として他に掲げられる
マテ茶やココアについては勉強不足で実態がつかめていません。
そのくせに、お茶についてのうのうと語って恐縮ですが(汗)

これからの5年

1.合組だからこそ作りあげられる香味が
感じ取れるお茶の取り扱いを始めます。
2.生産者減少、担い手不足を改善できるよう動きます。
3.人と周辺他者との繋がりを育む潤滑油のような
「美味しいお茶」が生まれる源を探求し続け
これまでの5年と同様に、お客様にお伝えします。

潤滑油としてのお茶

3の 潤滑油としてのお茶をもっと広くご提供するために
夜(昼下がりも可)の訪問お茶会を年明けから始めます。
レストランにお邪魔し
そのレストランにてディナーをお召し上がり後のお客様に
私どもがお茶を淹れるというもの。
お食事の後ですので、お茶は少な目かつ濃い目に。
静かに、ただ淹れ手として黒子のように存在します。
そしてお茶の、心に働きかける力を感じ
お仲間とともに、賑やかに、またはしっとりと
かけがえのない時間を過ごしていただきたく思います。
まずは、あるレストランさんで試行錯誤させて頂き
パッケージ化して広くご案内できるよう頑張ります。

これからもよろしくお願いいたします。