紅茶の香りと緑茶の香りⅡ
~緑茶は身体を冷やさない~

前回、紅茶の香りにある様々な効果のご紹介と同時に
中医学におけるお茶のことに触れました。
中医学では、緑茶は「涼」性、紅茶は「温」性とされます。
これをもって「紅茶は身体を温めますが
緑茶は身体を冷やすので注意」というふうに
説明されているブログなど拝見することがあります。
そのような不遇な扱いを受ける緑茶について、
今回も引き続きご説明します。

中医学における緑茶

あらためて中医学における
緑茶の位置づけを確認すると
「清利頭目」「除煩止渇」「安神」「消臭」「生津止渇」「消食止利」「利尿消腫解毒」 といった内容です。
難しすぎるのでかみ砕くと下のとおり。
「清利頭目」:体内にこもった熱による頭痛や目の充血を改善すること。
「除煩止渇」:胸の中が熱く苦しくじっとできないような煩躁(はんそう)状態を改善すること。
「安神」:精神の安定。
「消臭」:言わずもがな。
「生津止渇」:必要な水分を生み出し、渇きを止めること。
体内に余分な水分をため込まないこと。
「消食止利」:食欲を促進し、下痢を改善すること
「利尿消腫解毒」:水をさばく作用のこと。
排尿でむくみを改善すること。

西洋医学の観点から

西洋医学の観点からみると、
ポリフェノールの薬理特性にある抗菌・抗ウイルス作用は
炎症や熱症を軽減する効果と言えます。
また興奮性を下げること(テアニンによる精神安定効果)
血圧上昇を抑制すること(カテキンの作用のひとつ)
その他過剰な機能を落ち着かせることも「冷やす」と
表現されます。
茶葉を用いた頭痛や風邪の漢方薬がありますが
それは片頭痛の際の脳内血管の炎症や
呼吸器の炎症を鎮めるために
茶葉が用いられているとのこと。
これらを見るだけでも、余分な熱を取り除く働きだと
わかります。

緑茶は身体を冷やすのではない!

温かい飲み物を飲むと一時的に身体は温まりますし
冷たい飲み物を飲むとその逆のことが起こります。
スープやお味噌汁など、何にでも言えることです。

また温かい飲み物を飲んで身体が温まり(体温が上昇し)
汗をかき、気化熱で皮膚温が低下する場合もあります。

しかし、この温度の上下は恒常性をもたらすほどではなく
緑茶が薬理的に皮膚温を下げるということは
考えにくいのが実情です。

百歩譲って、あまりにも沢山一度にがぶ飲みすると
急性中毒症状により末梢血管が収縮するようです。
そのため手足の冷えだけでなく動悸、吐気など
危険な症状が出ますが、当然ながらこれは別問題です…

繰り返しになりますが
緑茶は身体を冷やすのではありません。
体温や皮膚温を下げるのでもありません。

体内にこもった熱を取り除き、
体内に余分な水分をため込まないような働きをしています。
炎症を軽減し、過剰な状態を和らげる働きをしています。
ゼロをマイナスにするのではなく
余計なプラスをゼロに戻しているのです。
インターネットに氾濫する信憑性や
公平性を欠いた情報に惑わされる人が
一人でも二人でも減りますように。

今回は、見識ある鍼灸師の方のお話も伺いながら
纏めさせて頂きました。
次回は陶器と磁器の話に戻ります。

 

参考文献
「性味表大事典」
元気書房代表竹内郁子 編著