紅茶の香りと緑茶の香り

陶器と磁器の比較について具体的に書く予定でしたが
先に気にかかることがありそちらについて今回は綴ります。

日本紅茶の日記念イベントとして配信されている(2021/4/29時点)
三井農林株式会社のYoutube動画を視聴して感じたこと。

紅茶の香り

その動画の内容を要約すると…
・人の自律神経は交感神経と副交感神経から成る。
それらがバランスよく働くことが大切である。
・副交感神経は心身を休息に導く神経。
リラックスさせる、瞳孔を縮小させる、心拍数を抑える、血圧を下げる、胃腸の働きを活発にし、唾液が増える、血管を拡張させるといった働きがある。
・交換神経は心身を活動に導く神経。
緊張・興奮させる、瞳孔を拡大させる、心拍数を増やす、胃腸の働きを抑え、唾液を減らす、血管を収縮させるなどの働きがある。

・紅茶には、約600種類の香り成分がある。
特にダージリンセカンドフラッシュには
他の紅茶より、果実・花・甘い香りの成分が多く含まれる。

・実験の結果、上のような香気成分には
1.副交感神経に対するリラックス効果
(瞳孔が収縮することで証明される)
2.交換神経の活動を抑制することによるストレス抑制効果
(抹消血管が広がる→血流が増加する→皮膚温が上昇することで証明される)
3.脳活動に対するリラックス効果
(人間らしさの脳といわれる前頭葉の前頭前野部の脳血流が低下することで証明される)
があることがわかった。

このような内容でした。

ここで特に印象的だったのは
交感神経の活動を抑制することによるストレス抑制効果により
「皮膚温が上昇する」ことです。

薬膳の世界では

話は変わりますが、中医学(薬膳)の中で
お茶はどう評価されているのでしょうか。
薬膳の世界では、食物は「温熱平涼寒」の
いずれかの働きをするとされます。
ここで紅茶は通常「温」、一方緑茶は「涼」として
身体に作用すると分類されます。

今回、三井農林の動画を視聴したことで
紅茶が「温」と分類される一因は
香気成分で副交感神経が刺激され血流が良くなる結果
皮膚温が上昇するからではないかと推測しました。

では、緑茶の香気成分は、自立神経に対して、
特に皮膚温についてはどのように作用するのでしょうか。
紅茶の逆のことが起こっているのでしょうか???

ある論文では、みどりの香り(青葉アルコールや青葉アルデヒドなど)を
ストレスのかかった状態で嗅ぐと疲労回復するとのこと。
非ストレス下では顕著ではないけれど
ストレスを負荷した後には回復促進するといいます。
人ってうまくできているのですね。
免疫への影響としては
みどりの香りは内分泌・自立神経・免疫活性を高める作用を有するとのことです。

では、皮膚温にはどう影響しているのでしょうか???

緑茶=涼のメカニズム

お客様から「緑茶を飲むと身体が冷えるのですよね。
冬は飲まない方がいいですか?」
といった質問を受けることが(ごく稀にではありますが)
ありました。
面と向かってお聞きになる方は少数でしょうから
予想以上に多くの方が不安に思っているのかもしれません。

「涼」の言葉のイメージだけが独り歩きすると
まるで身体機能を低下させるかのような印象にもなりかねない。
それは寂しいことです。

アロマテラピーでは、例えばラベンダーはリラックスさせ
ペパーミントは頭がすっきりする覚醒効果だといいます。
どちらも適切に採り入れると効果がある。どちらも良いものとして普及しています。

緑茶=「涼」のメカニズムが、現代の医学や科学の力で
示されてほしいと思います。
そうすれば、「緑茶も身体に良い影響を与えていますよ。その過程或いは結果的に、皮膚温はちょっと下がるんですよ。全く気にするようなことではないですよ。」と言えるのですが…
引き続き、もう少し調べます。

 

参考文献
「緑茶の疲労回復効果」
渡邉映理、木村真理、今西二郎
「“みどりの香り”の研究-その神秘性にせまる」
畑中顯和