お茶を淹れる道具の話Ⅳ
陶器・炻器(せっき)と磁器

お茶を淹れる道具選びにおいて
「どんな素材でも大丈夫ですか?」という質問を
時々お受けします。
お客様には
「日本の緑茶を淹れるなら陶器や炻器をお勧めしたい」
「磁器は色や香味移りしないことより汎用性が高い」
「他にもガラスが合成樹脂といった様々な素材があるためデザインや大きさも見つつ好きなもので」
・・・などとご案内しています。
茶器も出会いと相性が大切なので
万人への正解はないと思うのです。
昨今よく耳にする「ブランドより自分だけのストーリー」
といったフレーズが相応しいのかもしれません。
そういった前提はありつつ
今回は素材がお茶の香味に与える影響について綴ります。
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素材
陶器・炻器と磁器の話題の前に、焼き物の素材を
整理しておきます。
土器・陶器・炻器・磁器について。
土器とは、地面から掘り起こした粘土を用いたもの。
陶器も粘土を用いるが
原料の粘土は精製されきめ細やかで均質なものを
使用し、また施釉することが一般的。
炻器は英語に訳するとStone ware。
しかし炻器の定義は日本独特です。
いわゆる焼き締め陶器の総称で
特定の産地で生産された焼き物を指すのが通例。
特に常滑焼や萬古焼は炻器として
陶器と別に紹介されることもあります。
陶磁器研究においては炻器という分類はせず
一括して陶器に含む場合も多い。
磁器はカオリンを多く含む陶石を原料に作られ
焼き物の中で最も硬質。吸水性はほとんどない。
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陶器・炻器の良い点
磁器と比較した場合の陶器や炻器の道具の良い点は
表面の凹凸や気孔の存在により
お茶の味わいが円やかになる傾向があることです。
見た目にも温かみがあります。
常茶(じょうちゃ:日々の生活に根付いているお茶)
を淹れるために用いられるのは
圧倒的に陶器ではないでしょうか。
色調は使いこむほど茶液や茶渋を吸収して
生地がしまり美しい光沢となります。
実際、日々のお手入れを怠らず
何年も使いこんだ陶器や炻器の茶器は輝きを増し
風格が出ます。
毎日のお手入れとしては、よく洗って熱湯にくぐらし
蓋を開けてよく乾かすだけ。
洗う時には食器用洗剤を使わずに
また熱湯をくぐらせた後は拭かなくてもよいです。
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磁器の良い点
陶器や炻器と比較した場合の磁器の道具の良い点は
茶の味わいをそのまま引き出すこと。
円やかになってほしくないお茶や
いい意味で尖った部分を残して楽しみたいお茶には
そのお茶のありのままを見せてくれるので向いています。
香り、味わい、水色が茶器に移らないため
お茶の種類を問わず使えるのもありがたいところ。
釉薬と一口に言ってもの色合いや雰囲気も様々。
釉薬自体が風景を織りなすような磁器は
毎日見ていても発見があります。
絵付けが施されるものは線が精密で絵画を観るよう。
そのような美しさを楽しめることも磁器の魅力です。
手に取る度に心ときめく道具に出会い
それを身近に置き使えるような毎日を送ることができれば
理想的だと思います。
道具も大切ですが、そればかりを礼賛することなく
道具を通じて暮らしが鮮やかになりますよう。