お茶を淹れる道具の話Ⅲ
   ~急須の形~

前回は「複数種類のお茶を好む方で、
茶器は一種類にしたい方」に向けて
素材と大きさについて綴りました。
今回は、急須を選ぶ時の形の見方について
経験も含めてポイントをお伝えします。

横手・後ろ手・上手

急須は取っ手の位置により分類できます。
注ぎ口に対して横に付いている横手と
注ぎ口に対して後ろに付いている後ろ手
急須の上部に付いている上手があります。

横手急須は日本の緑茶用として最も普及してきた形です。
(横手急須が日本だけで普及している経緯については
茶器の歴史について触れる時に書きます。)
ちなみに注ぎ口と持ち手の角度は90℃より僅かに狭く
それゆえに手首が疲れません。

後ろ手急須は、中国大陸や台湾の急須
またティーポットなどとして普及しています。

しかし、横手=緑茶、後ろ手=中国・台湾茶という概念に
とらわれなくて良いと思います。
横手急須で中国茶を淹れても間違いではありませんし
後ろ手急須で緑茶を淹れても構いません。
取っ手の位置よりも、前回述べた「素材」、「大きさ」や
下に書かせていただく「蓋の大きさ」や
「扱いやすさ」、「お手入れのしやすさ」に
着目されることをお勧めします。

蓋の大きさ

急須の形を見る時のポイントの一つは蓋の大きさです。

温度を下げて淹れるお茶
(玉露・煎茶・かぶせ茶・玉緑茶・深蒸し茶など…)
をよく飲む方には、蓋が大きい急須をお勧めします。
蓋を開けておくと温度が更に下がりやすくなりますし
茶葉の開き具合を確認しながら淹れることができます。

逆に高温で淹れて熱く飲むお茶
(ほうじ茶・烏龍茶・紅茶・プーアール茶・など…)
が好きな方は、少しでも熱く味わうためにも
蓋が小さ目の急須をお選びください。

扱いやすさ、お手入れのしやすさ

扱いやすいということも大変重要です。
持ち上げやすい、傾けやすいこと。これは、
急須を見ているだけではわかりにくいです。
また、空の急須に触れるだけでも十分とは言い難いため
実際に水を入れ、注ぎ口から注いでみてください。

使い終わって洗う時
茶殻を捨てやすい急須の方が良いと思いませんか?
そこで私どもがお勧めするのは「印籠蓋」です。
下の図のような、蓋がすぽっと本体の中に入る形です。
さっさっと数回水を通すだけで
茶殻は完全に捨てきれます。

( 参考までに、下が印籠蓋ではない場合の図です。
本体にひっかかりがあり、そこに蓋が乗っています。)

急須の注ぎ口

注ぎ口は小さめ、つまり浸出液がどっと出ず
細く出るものが使いやすいです。
茶液が出る量が多いと味わいがさっぱりし過ぎますし
こぼれるリスクも高まります。 
注ぎ口の先の縁は、切り立ったものでなく
薄くなっている方が水切りよく尻もれしにくいです。
尻もれは、もちろんしない方がいい。
しかし湯量が多すぎたり、注ぎ方に勢いがなかったりすると
どんなに完成された注ぎ口の急須でも
幾ばくかは尻もれするものです。お留め置きください。

そのほかのポイント

急須の底は、茶葉が十分に広がる大きさが良いです。
生地が厚手だと温まりにくく、湯温が下がりやすいです。
生地が薄手ですと熱くなりやすいですが
事前に温める必要がないため
概して使いやすいという印象を持っています。

今回は、茶こし部分の網目のことには触れませんでした。
正直この点はまだ勉強不足ですので語れません。

終わりに

お選びになる時には
可能なら試しに水だけでも注いで
使い心地を確かめてください。
見た感じ、触り心地で気に入られても
実際お湯を注ぐと予想以上に重いとか手首が疲れるとか
使う時の力の配分が難しいとか…相性があります。
日々使うものですので、大切にお選びください。

弊店でも茶器選びのご相談は承ります。
茶器をお売りするためではありません。
一人ひとりのお茶時間が豊かになることを目掛けて
ご相談に応じさせていただきます。
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