お茶を淹れる道具の話Ⅱ
~ひとつだけ選ぶなら~

お茶の味や香りの決定要素は下の四つ。
1. 茶葉
2. 水(水そのものと湯沸かし方法)
3. 淹れ方(茶葉量・湯量・湯の温度・抽出時間)
4. お茶を淹れる道具

道具はあくまで道具。
道具はお茶の香味を左右する大きな要素とは言えず
あくまで補完的な役割だととらえています。
料理でも、素材や水や調理法といった決定要素の方が
道具より結果に大きく影響するのではないでしょうか。
そういった前提はありつつ、今回は
「いくつも茶器を持つことは難しいが何かひとつだけ
汎用性が高く使い心地が良いものを…」
という声にお応えしたく、綴ります。

味や香りの決定要素~茶葉・水・淹れ方~

1. 茶葉
個々人の嗜好でお選びください。

2. 水(水そのものと湯沸かし法)
ご自宅の水道水で淹れてみて美味しくなかったら
水道水を浄水器に通すか
軟水のミネラルウォーターをお試しください。
いつも水道水で淹れている人も
機会がありましたら浄水やミネラルウォーターや名水で
淹れてみてください。
香り高く、味は甘く、口当たりはまろやかになる
可能性が高いです。

湯沸かし器具の素材は
ステンレスとアルミはなるべく避けつつ
ご自由に選んでください。
電気ポットは使い始めの臭いに注意、また
錆びるおそれがある器具の場合は
錆びに注意してください。
その他は、飲み手が美味しいと思えるなら
銅のやかんでも電気ポットでも鉄瓶でも良いです、本当に。

3. 淹れ方
お手間でなければ、弊店の「生活に根ざしたお茶講座」にお越しください。

味や香りの決定要素~ 4. お茶を淹れる道具~

「一種類のお茶しか飲まない方」や
「複数種類のお茶を好む方で、茶器もそれに応じて所有して構わない方」は
それぞれのお茶の種類及びお茶の量に応じて
お選びください。
茶器を選ぶ際にご覧になるべきポイントは
概して、素材・大きさ・形状・網部分です。
そこに、見た目の色、艶や図柄も考慮してご所望ください。

「複数種類のお茶を好む方で、茶器は一種類にしたい方」
へのお勧めは…

素材

お飲みになるお茶の中に「濃い」お茶が含まれる場合は
素材はガラスか磁器がお勧めです。
「濃い」には、ほうじ茶や紅茶も含まれます。
香りが強いためです。
ガラスや磁器は、茶器自身が水や香りを吸着しません。
色が染みついてもスポンジや漂白剤で除けます。

もし複数のお茶を飲む習慣があっても、それが
煎茶・かぶせ茶・時々軽発酵の烏龍茶・・・というように
味も香りも色も柔らかいもの同士であれば、
素材はガラスや磁器に限定されません。
無釉の土ものからも選ぶことができます。

大きさ

一度に300cc淹れようとすると300ccの茶器が必要です。
その場合、茶葉は5~6g使うのが一般的。

これを、3回に分けて抽出するなら
100ccの茶器と2~3gの茶葉。
5回に分けるなら60ccの茶器と1~2gの茶葉が必要。
このように、煎を重ねるなら
(複数回お湯を注いで何煎も抽出すれば)
必然的に茶器は小さくてもよくなります。

小さい茶器は場所も取らないし、何より愛らしい。
茶葉も少しずつ消費するのがエコであり時代に即している。
連動して、一回あたりの単価が下がる、つまり
少し背伸びして高品質のお茶を手に入れやすくなる。
高品質のお茶だと
複数回煎を重ねても、その移ろい方が美しくなる。
(少なくとも「3煎目、もう味がない…」とはならないはず。)
ステイホームや在宅ワーク中に自分時間を彩る上でも
煎を重ねてお茶時間を愉しむスタイルは相応しいのではないでしょうか。

このような理由より、私どもは
小さ目の茶器を推奨しております。
目安としては、日本茶用なら200cc程度まで。
中国茶や台湾茶用なら100cc程度までの大きさです。
(続く)