味覚とお茶

私たちが飲食するとき、純粋に味を感じているようで
実は様々な要素に左右されています。
人間が感じる五感には優先順位があり
最も優先順位が高いのは、触覚
それから、聴覚>視覚>嗅覚>味覚の順。
味覚は他の感覚に左右されやすい感覚です。

さまざまな感覚が味覚に与える影響

味覚が触覚に影響されている例として
よく撹拌し表面にカプチーノのような泡が張った抹茶は
口当たりが滑らかになり、そうでない時よりも
苦味を感じにくくなります。

聴覚も味覚を左右します。
飛行機の機内では、騒音のため味覚が鈍るため
地上よりも美味しさを感じ取りにくいそうです。

色彩や形など、視覚的な要素によって
食欲が沸いたり減退したりするのも
味覚が影響されている証拠でしょう。

嗅覚も、より味覚への影響力が強くなります。
甘い香りのお茶や蜜の香りのするお茶は
まるで味まで甘く感じられたり
本当に蜜が入っているようにすら思えます。

また、味覚同士でも同じことが言えます。
例えば、直前に飲食した味は
次に飲食するものへの感じ方を左右します。

温度が味覚に与える影響

味覚は温度によっても感じる強さが変わります。
苦味は温度が体温程度より下がると強く感じますし
甘味やうま味は体温程度のとき感じやすくなります。
お茶に塩味はあまり関係ありませんが、塩味は冷めてくる方が強く感じます。

高温のお湯で淹れたばかりの熱いお茶は、
たいていの場合美味しいと感じませんか。
これは、香りが引き立ち、嗅覚に訴えることと
比較的、苦味が目立たなくなることも影響しています。

こう見てくると、お茶の持ち味が正直に現れるのは
人肌程度の温度で味わう時ではないでしょうか。

その他味覚を左右するもの

時間帯によっても味覚の感度は変化します。
人は疲れてくると味覚も鈍感になるため、
前日の疲れが取れない日の朝や
忙しくて疲労が蓄積している夜などは
調子が良い時に飲むお茶とは違い、特に、渋苦味を感じやすくなります。

お茶を選ぶとき

お茶は嗜好品なので人の数だけ味わい方があります。
ただ、味覚がこれほど繊細であることを踏まえ
一度、二度味わった印象で好き嫌いを決めてしまわず
日や時間帯を変えたりして何度か淹れてみた後
そのお茶が本当に自分好みか判断することが
大切ではないでしょうか。
それは、本当に自分が長くつきあえる味を
見つけることにもつながると考えています。

 

参考文献
「甘味と旨味の味覚閾値における口腔内温度の影響」 秦 朝子 ほか