お茶の香り

日頃から親しむ飲み物であればあるほど
あらためてどのような香りがするのか、じっくり確かめることはないかもしれませんが
実は、お茶には多くの香気成分が含まれているのです。
ワインや珈琲にもあるように、お茶にも近年フレーバーホイールが作成されています。
お茶の香りを、実に多様な表現で言い表していて、見ているだけで楽しくなります。

これからお茶の香りについて綴っていきます。

お茶の香気成分の豊富さ

大前提として、お茶の木はツバキ科の常緑樹。お茶は葉や茎の抽出液です。
そこに本当に多種多様な香りが含まれているのだろうかと不思議に思いませんか?
実際、現代の技術を用いて香気成分を分離していくと
お茶には700以上の化合物が同定されています。

香りは何のために?

なぜ香いを保有しているのでしょう?
植物にインタビューできないので、あくまで人間の分析によると…
茶に限らずどのような植物であっても
植物自身が身を守り子孫を残すために、香りを保有しているといえます。
わかりやすいところでは、香りにより花粉を媒介してくれる虫を呼んでいます。
また、自身の天敵となる虫を退けています。
生きるための香りなのです。

香気成分とは?

アロマ分子と呼ばれることからもわかるように、分子です。
よく元素記号が手をつないだように示される、あれです。

どんなふうに存在しているの?

香気成分はどのような形で存在しているのでしょうか。
ひとつには、脂質の形で存在しています。
葉に在る、リノール酸やリノレン酸といった不飽和脂肪酸。
ここにはアルデヒドやアルコールの香気成分が含まれます。
若葉のさわやかな香り、みどりの香りです。

またひとつには、カロテノイドの形で存在しています。
カロテノイドは赤色の色素。
ここにはヨノン系化合物やダマセノンの香気成分が含まれます。
玉露や抹茶特有の香りやフルーティな香りです。

もうひとつは、グルコースなどの糖と結合した配糖体の形で存在しています。
烏龍茶や紅茶で、よく、花や果物のようないい香りがすると表現しますが
それは糖と結合している香気成分のことです。

香りの生まれ方

これらの香気成分たち、脂質やカロテノイドや糖と結合したままでは香りは生まれません。
葉が摘まれ、揺らされたり
葉と葉が擦れ合ったり
また揉まれたり加熱されたりする中で
香気成分は結合から切り離され、それにより香りが生まれるのです。
次回はもう少し、この点を深堀りしようと思います。

参考文献
「日本茶の香り」 川上美智子 
(日本茶インストラクター協会会報「茶論」No63)
「茶の香気成分の貯蔵メカニズム」
茶は香りをどのように繋ぎとめるのか? 大西利幸 小埜栄一郎
「香りで料理を科学するフードペアリング大全」
ベルナール・ラウース ピーター・クーカイト ヨハン・ランゲンビック