水とお茶~まとめ~

以前、水についてコラムで綴っていた時期がありました。
水道水と浄水の違い
硬度別に様々なお茶で飲み比べ
名水別に様々なお茶で飲み比べ 
などについて、いろいろ書いてきました。

複数のコラムに渡るので、お読みくださる方には
大変なご足労をおかけしている気がします。
今回、まとめて読み切り版を書くことにしました。

お茶における水

お茶の約99%は水です。
お茶によって多少前後しますが、だいたい同じ。
つまりお茶は、たっぷりした水の表面にその成分をそっと浮かべているようなものなのです。
お茶において水がどれほど大切か、これで十分伝わるかと思います。

水道水と浄水

水道水は、一生飲んでも安全であるように衛生管理されているとのこと。
しかし、衛生管理するために、浄水場で添加した物質が反応してしまい
異臭が発生することがあります。
これがいわゆるカルキ臭。

実際、カルキ臭が気にかかるのは年間を通じて数回(悪天候が続いた後など)です。
(お住まいの水環境によって異なると思います。)

いずれにせよ、水道水は浄水することをお勧めします。
浄水器にかけることで、トリハロメタン等を除去することもできますし
それにより、水自体の口当たりが軽くなります。
お白湯で飲み比べると顕著に違いを感じることができます。
水自体が浄水器で浄化され、口当たりが軽くなると
お茶の香り・味わいが研ぎ澄まされて、よりはっきりと感じることができます。

道具

水の状態を整えたら、次に道具に目を向けてください。
湯沸かし道具やお茶を淹れる道具、飲む道具も香り・味わいを作るのに一役買っています。

詳しくは弊店の「生活に根ざしたお茶講座」をどうぞ。(宣伝でした)

硬度別お茶との相性

水には多くのミネラルが含まれます。
このうち、カルシウムとマグネシウムの値を計算式に当てはめると
その水の硬度を求めることができます。
日本の計測方法では、0~120mg/ℓ程度なら軟水。
金沢市の硬度は20~30mg/ℓですので、軟水の中でも大変硬度が低いです。

硬度はあくまで、カルシウムとマグネシウムだけを考慮したものです。
他のミネラルまで総合的に判断しているのではありません。
とはいえ、硬度が低いということは、他のミネラルも突出して多くはない
逆もまた然り、という推測ができます。
実際、知りえる限りのミネラルで比較しても、そのような傾向があります。

軟水は軽く甘く柔らかい口当たり。
硬度(ミネラル分)が上がるほどに、その水は重く輪郭がくっきりして
塩味にも似たミネラル感がある。
総じてこのように言えます。

次に、硬度(ミネラル分)の異なる水とお茶の相性は、概してこのように言えます。
味わいが繊細(淡い)で香りも控えめなお茶(例えば緑茶や清香系烏龍茶)は軟水と相性が良い。
お茶の香りや味わいが濃く重くなるにしたがって(焙煎系の烏龍茶や紅茶)、硬度(ミネラル分)が高い水の方が合う。
焙じ茶のように香り高いものは、軟水から硬水まで心地よく味わえます。
フレーバーティーも同じ原理です。

なぜそのような傾向があるかというと、お茶は、たっぷりした水の表面に
その成分をそっと浮かべているようなものだからです。
線の細いお茶は線の細い(ミネラル分が少ない)水と合う、逆もまた然り。

味わいが繊細(淡い)で香りも控えめなお茶に
重く輪郭がくっきりして塩味にも似たミネラル感がある水を合わせれば
補完関係になるのではないか?というご意見もあるかもしれません。

実際、緑茶や清香系烏龍茶に硬度120mg/ℓを超える水を合わせると
水の重みが前に出てお茶の繊細な香り・味わいを覆ってしまいます。
特にうま味のある緑茶の場合は、うま味(アミノ酸)と塩味(ミネラル感)が混ざり
重みとくどさが出てしまいます。

逆に、焙煎系の烏龍茶や紅茶に金沢の水のような軟水を合わせると
お茶の香り高さ、口当たりの良い角、味わいのキレ、余韻、全てが
水の柔らかさに覆われ、良い意味で尖った部分も、丸っこくなります。

例えば金沢のように硬度の低い水は
中国の岩茶や鳳凰単層のような精の強いお茶には全く適していません。
精の強いお茶には力強い水が必要だということを如実に示してくれる、好例です。

なお、硬度が高いとお茶の渋みは出にくくなります。
そのため、硬度の高い国ではタンニン分を感じやすい紅茶を選ぶ傾向があります。
その観点では、軟水はお茶を正直に表す水と言えます。

名水

名水と呼ばれ、誰でも汲めるように整備、案内されている日本各地の水は基本的に湧水。
自然が造り上げたままの水です。
水の起源や背景をたどっても二つと同じものはない
人為的に添加された成分が含まれないこともあり、すーっと身体に浸み込んでいく。

そのような水は、鉄釜や鉄瓶や土瓶といった、自然の素材から成る道具で
扱い味わうことが似つかわしいと思います。
理由を論理的に説明することはできないのですが…そのように体感しています。

水のたどってきた出生を思いつつ、各地の郷土料理や風習や偉人さんを知るような気持ちで向き合い
その水で、その土地に由来のある素材を扱う。
名水の価値とはそういうものではないかな、と思います。

ある日偶然、ある水との出会いによって、自分の知るお茶の新たなポテンシャルに気付くことでもあれば
その時は、「ラッキー!」と、出会いに感謝すれば良いのかな、と。

弊店の実施する「生活に根ざしたお茶講座」では
「水道水と浄水」「湯沸かし別飲み比べ」「硬度」「名水」といった項目で講座を実施しています。
ぜひこちらも、どうぞ。